学長挨拶
一つの例から話しましょう。溺れている子どもを目の前にしたとき、君は考えることなく助けようと飛び込んだとしましょう。君が十分泳げなければ二人の命はどうなるかは明白なことであります。
たぶん諸君は、自分の体験に照らして、ここで語られている例については比較的たやすく理解できるでしょう。なぜならば、諸君は「人のために役立ちたい」という切実な気持ちをもちながら、それを実現するための行動力と、実現するための技術がないことに悔し涙を流したことも、一、二度のことではないはずだからです。
東北福祉大学は、まさにこのような社会福祉を実現する「理論と実践」を学ぶところです。「行学一如」。諸君は、本学で、諸君たちの貴重な財産である「人のために」というやさしさが正しく発揮され、社会の中で生かされるための実践力を得る学問を学ぶのです。
「社会福祉」とは、いったい何でしょうか。残念ながら、学問的にも答えは定まっていません。
「福祉」という言葉にはさまざまな意味がこめられ、さまざまに使用されています。
私もまた、この問いかけに終始考えさせられている者の一人です。そこに「福祉」を学ぶことのむずかしさがあります。
けれど「福祉」とは、人間が生きていく以上さけられない問題であり、今の時代、新しい「福祉」への発想が必要とされていることは間違いありません。「福祉」に対するニーズは地域住民の一人ひとりにとっても、各国にとっても、さらには世界にとっても切実な問題であり、福祉が担わなければならない課題は日に日に広がっています。人間が共に生きるために、人間の幸せとは何かをもう一度ふりかえり、「人間の何を」守り、保障するべきかが問われています。
社会福祉は技術だけではありません。最も大切なものは技術を行使する人間性であって、人間をどう捉えるかであります。つまり自らが全体的人間であることを強く認識し、他の人間にも全体的人間を認識しなければならないのです。
東北福祉大学での学生生活において、諸君は「福祉」という概念が持つ深淵なる意味を世界的なスケールで真摯に追求してほしい。
福祉に限らず、あらゆる面で活躍する自分であることを意識し、積極的に学内外の活動に取り組み、人間を磨き、二度とない人生を芸術してください。
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