公開研修会のご報告
国見ヶ丘地域包括支援センターが主催し、せんだんホスピタルが共催する形で、地域の方々にむけた公開研修会が、当院大会議室を会場に開催されました。当院の浅野院長が「高齢者のうつ」をテーマに講演しました。参加者された方は48名、うつ病も早期発見が大切であること、うつ病と認知症のちがいなど、幅広い内容に耳を傾けていました。
高齢者のうつについて
国見ヶ丘地域包括支援センター講演,2008.10.9
東北福祉大学せんだんホスピタル
浅野 弘毅
1.うつ病とは何か
これという理由なしに、深い、心の底から滲みでるような憂うつ感、悲哀感が起こり、全身倦怠感、違和感をともない、自発性を失う。思考も行動も抑制され、自信を失い無口になり、人を避ける。 何事につけ悲観的で、自分を責める内容の妄想(罪業妄想)、職を失って家計を支えることができなくなるという妄想(貧困妄想)、不治の病に襲われたという内容の妄想(心気妄想)をもち、自殺を図ることもある。
2.うつ病の特徴
- 1)身体の症状が前面に出るので、内科などを受診することが多い。
- 2)病前の性格(メランコリー親和型性格)
- 几帳面、真面目、仕事熱心、責任感旺盛、他者配慮、秩序を重んじる。
- 3)発病の年齢
- 青年期から老年期。30歳前後と初老期にピークがある。思春期以前は極めて稀。
- 4)発病前の社会適応は良好。
- 5)成因
-
- ⑴気質
- ⑵誘因
- 女性:転居(引越しうつ病)、出産(産後うつ病)、子どもの独立(空の巣症候群)など。
- 男性:地位の昇進(昇進うつ病)、転職・転勤、引退など。
- 男女共通:身体疾患、過労(燃え尽き症候群)、事故、近親者の死など。
- 6)症状
-
- ⑴精神症状
- 抑うつ気分、気分の日内変動、悲哀・絶望感、不安・焦燥、苦悶感、精神活動の抑制、自殺念慮・自殺企図、心気妄想、貧困妄想、罪業妄想
- ⑵身体症状
- 全身倦怠感、不調感、頭痛・頭重、睡眠障害、食欲不振、便秘、体重減少、インポテンツ、生理不順
- 7)経過・予後
- ⑴経過は概して良好だが反復傾向がある。
- ⑵高齢者、脳動脈硬化症などがある場合は長びき予後が不良である。
- ⑶増悪する季節が一定している傾向がある。
3.うつ病の治療
- 1)休養
- 2)薬物療法
- 3)カウンセリング
- 4)家族の協力・職場の協力
4.日本の自殺の実態
- 1)自殺者数の推移
- ・1998年から年間自殺者数が3万人台。
- 2)中高年の自殺の増加
- ・50歳代の男性の自殺が増加。
・65歳以上の高齢者が25%を占める。 - 3)自殺の手段
- ・縊首が全体の約6割を占める。
- 4)自殺既遂と未遂
- ・未遂者は既遂者のおよそ10倍いる。
- 5)性差
- ・男性が女性よりも2.5倍多い。
- 6)地域差
- ・高齢化率の高い県ほど自殺率が高い。
5.働き盛り世代の自殺
- 1)長引く不況の影響
- 2)コホート(昭和元年~15年世代)効果
- 3)精神科受診への根強い抵抗感
- 4)サポート体制の不備
6.自殺の危険因子
- 1)性格傾向→感情表出少なく孤立傾向。
- 2)援助組織の欠如→友人がいない。
- 3)自己破壊傾向→自傷歴・自殺企図歴。
- 4)先行する出来事・行動→仕事の失敗・加重労働・離婚・転職。
- 5)家庭要因→家庭内の不仲。
- 6)アルコール依存。
7.自殺の危険に気づくために
- 1)うつ病の症状がある。
- 2)原因不明の身体の不調が長引く。
- 3)飲酒量が増す。
- 4)自己の安全や健康に留意しない。
- 5)仕事の負担が急に増える、大きな失敗をする、職を失う。
- 7)職場や家庭の人間関係に問題がある。
- 8)本人にとって価値あるものを失う。
- 9)重症の身体疾患にかかる。
- 10)自殺を口にする。
- 11)自殺未遂におよぶ。
8.うつ病と認知症の違い
| 認知症 | うつ病 | |
|---|---|---|
| 病前性格 | 一定しない | メランコリー親和型が多い |
| うつ病の既往 | ないことが多い | あることもある |
| 初発症状 | 認知障害がうつより先に出現する | うつが認知障害より先に出現する |
| 症状の訴え方 | 記憶力低下を軽く言ったり否定する | 記憶力低下について、くどく過大にこまごまと訴える |
| 外見・行動 | しばしば無頓着でだらしがない 表情乏しく周囲に無関心 |
表情は悲しげで心配そう 動きは少ないがいらいらしている |
| 質問への応答 | 深く考えないで応答する 間違いや言い訳が多い |
反応は遅いが、真剣に考えて「わからない」と言う |
| 認知障害 | 通常全般的に一貫して障害されている | しばしば記憶障害のみに限られ部分的である |
| 身体症状 | 身体的訴えは少ない | 不眠、便秘、だるさなどを訴えることが多い |
| 自殺傾向 | 少ない | しばしば認める |
| 夜間の増悪 | あることが多い | ない |