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芹沢銈介著「琉球の形附」


表紙


形附の工程図より

1943年
日本民藝協会発行
限定100部
23.8×19.0㎝

 「琉球形附には染技以前の心が籠もる。眼前に形附の一裂を掲げて、そして見よう。ある時はその不思議な模様の世界に誘はれる。又ある時はその材質の美しさに惹かれる。而も常に模様も色も質も、すべてを超えて先ず強くうち来るものはこの心ではないか。琉球形附には染めの効果を呑みこんで、技に馴れた仕事は見出せない。意匠に溺れる事なく、技巧におごらない。仔細に観るとそれぞれ精魂盡した仕事でありながら、布は豊かな餘猶を貯へてゐる。素地は用と仕事が選ぶから損はれる事なく、染められて木綿は益々木綿、麻は愈々麻の本質に輝いて見へる。模様はひたすら型に従ふ。型が模様を創り、模様を生む。琉球形附ほど型を信じ頼った染物は他に見當らない」

 上記は芹沢銈介が、ただ一冊の著作である『琉球の形附』の冒頭部分に書いた文章です。限定100部の貴重本は図版本文ともで146ページ。木綿と麻地に染められた紅型裂17種を貼りつけ、琉球形附、素地、型紙、色料、染方、模様、挿絵解説の文章が続きます。その後に写真で4点の着物と4点の風呂敷、11種の型紙、芹沢作の型染による13点の工程図を付けています。「紅型のバイブル」と呼ぶにふさわしい内容です。芹沢は、昭和3年に上野恩賜公園で開催された大礼記念国産振興博覧会の「民藝館」に並んでいた紅型のうちくい(風呂敷)に強い衝動を覚えました。『琉球の形附』にその時の様子を「私に呼びかけてゐる、「びんがた」に気が付いたのです。そこから私は、「びんがた」のあとを追ひつゝ、私の仕事に入ったのです」と記しています。それから11年後の昭和14年、15年にあこがれの琉球に渡り、瀬名波良持、知念積秀の工房に通って紅型の指導を受けました。その折に習得した具体的な技法について、「一染工の覚書」として『琉球の形附』を書いたのです。

 サントリー美術館で「紅型 琉球王朝のいろとかたち」展(2012年6月13日~7月22日)が開催されました。紅型は琉球王朝時代に王侯や士族などが着用した衣裳の染色技法ですが、展覧会では琉球国王尚家に伝わる国宝の紅型衣裳や戦前に本土にわたって来た古紅型衣裳を紹介しました。また、型を固定するために細いシラガ(生糸)で糸掛けした、琉球時代の型紙や、芹沢銈介収集の紅型衣裳13点と風呂敷4点も出品された、紅型の魅力を堪能できる充実した内容の展覧会でした。芹沢が『琉球の形附』に書いた上記文章をあらためて読み返すと、展覧会で展示された紅型の色と形の真髄を語る優れた解説文だと再認識しました。

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