I 修士論文の進め方
1 事前学習
修士論文の完成までには,①先行研究・文献にあたりながら,問題意識・目的や枠組みなどを明確にしていく,②方法論にもとづいて,データを収集・分析し,考察する,③論文を執筆するといった手順が必要になります(②,③については,並行する場合があります)。
修士論文について本格的に取り組み始める時期は,指導教員が決定してからとなります。
どのような研究法をとり,どのような論文構成をよしとするかは,専攻分野や指導教員から充分な指導を受ける必要があります。しかし,それに先立ち基本的な論文の書き方や方法論については,下記のような図書で自ら身につけてください。
●論文執筆全般
論文の書き方については,下記のような書籍が参考になります。
- 櫻井雅夫著 『レポート・論文の書き方上級[改定版]』慶應義塾大学出版会,2003年
- ダン・レメニイほか著 『社会科学系大学院生のための研究の進め方』同文舘出版,2002年
- 新堀 聰著 『評価される博士・修士・卒業論文の書き方・考え方』同文舘出版,2002年
- 吉田健正著『大学生と大学院生のためのレポート・論文の書き方[第2版]』ナカニシヤ出版,2004年
- 慶應義塾大学通信教育部編『卒業論文の手引<新版>』慶應義塾大学出版会,2003年
- 山田剛史・林創著『大学生のためのリサーチリテラシー入門』ミネルヴァ書房,2011年
- 白井利明・高橋一郎著『よくわかる卒論の書き方』ミネルヴァ書房,2008年
- 奥田統巳ほか著『読みやすく考えて調べて書く[第2版]』学術図書,2003年
●研究の方法論
研究を進めるにあたっては,方法論を意識して行うことも大切です。観察法,質問紙法,検査法,面接法,実験法,フィールドワーク,事例研究,臨床研究,実践研究,文献レビュー法などの方法があります。下記の書籍を参考にしてください。
また,研究対象者へのインフォームド・コンセント,プライバシーの守秘義務など研究の倫理も遵守する必要があります。
社会福祉学分野
- 星野貞一郎・金子 勇編著 『社会福祉調査論』中央法規出版,2002年
- 佐藤泰正・徳田克己編著 『社会福祉研究の課題と方法』田研出版,2001年
- マーテンズ,D. M. ・マクローリン,J. A. 著 中野善達ほか訳 『障害児教育の研究法』田研出版,1995年
- 立石宏昭著 『社会福祉調査のすすめ[第2版]』ミネルヴァ書房,2010年
- 畠中宗一・木村直子著 『社会福祉調査入門』ミネルヴァ書房,2004年
- 平山 尚ほか著 『ソーシャルワーカーのための社会福祉調査法』ミネルヴァ書房,2003年
- 岩田正美ほか編 『社会福祉研究法』有斐閣,2006年
福祉心理学分野
- 高野陽太郎・岡 隆編 『心理学研究法』有斐閣,2004年
- W. J. レイ著・岡田圭二訳 『エンサイクロペディア 心理学研究方法論』北大路書房,2003年
- 丹野義彦編 『臨床心理学研究法』誠信書房,2004年
- 田尾雅夫・若林直樹編 『組織調査ガイドブック』有斐閣,2002年
- 南風原朝和・市川伸一・下山晴彦編著 『心理学研究法入門』東京大学出版会,2001年
- 南風原朝和・市川伸一・下山晴彦著 『心理学研究法』放送大学教育振興会(NHK出版),2003年
- 『心理学マニュアル 研究法レッスン』『心理学マニュアル 面接法』『心理学マニュアル 質問紙法』『心理学マニュアル 観察法』『心理学マニュアル 要因計画法』北大路書房,1997~2002年
- 高橋順一ほか編著 『人間科学研究法ハンドブック[第2版]』ナカニシヤ出版,2011年
- 日本発達心理学会監修 『心理学・倫理ガイドブック』有斐閣,2000年
- 『発達研究の技法』『臨床心理学研究の技法』『社会心理学研究の技法』『教育心理学研究の技法』『性格研究の技法』『認知研究の技法』(シリーズ・心理学の技法)福村出版,1999~2000年
- 山本 力・鶴田和美編著 『心理臨床家のための「事例研究」の進め方』北大路書房,2001年
- 鈴木淳子著 『調査的面接の技法[第2版]』ナカニシヤ出版,2005年
- 安藤清志ほか編 『新版 社会心理学入門』東京大学出版会,2009年
- やまだようこ編 『現場(フィールド)心理学の発想』新曜社,1997年
- 松井 豊著 『心理学論文の書き方〔改訂新版〕』河出書房新社,2010年
- 都筑 学著 『心理学論文の書き方』有斐閣アルマ,2006年
- 杉本敏夫著 『心理学のためのレポート・卒業論文の書き方』サイエンス社,2005年
その他
- 小林康夫・船曳建夫編著 『知の技法』『知の論理』『知のモラル』『新 知の技法』東京大学出版会,1994-1998年
- 佐藤郁哉著 『フィールドワークの技法』新曜社,2002年
- 佐藤郁哉著 『フィールドワーク[増訂版]』新曜社,2006年
- 箕浦康子編著 『フィールドワークの技法と実際』ミネルヴァ書房,1999年
- グレイザー,B. G. ほか著 『データ対話型理論の発見』新曜社,1996年
- 田尾雅夫・若林直樹編 『組織調査ガイドブック』有斐閣,2002年
なお,データ処理に,統計的手法を必要とする場合は,統計の入門書も参考にしてください。統計の基礎を学ぶものとしては,下記の書籍がお勧めです。
- 櫻井広幸・神宮英夫著 『使える統計 Excelで学ぶ実践心理統計』ナカニシヤ出版,2003年
- 吉田寿夫著 『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』北大路書房,1999年
●著作権への配慮
すべての「表現」には著作権があります。先行研究を利用する際には,他者の著作権を侵害することのないように配慮してください。
「引用」にあたるものは,著作権者の了解を得ることなしに利用することができます(著作権法第32条)。ただし,「引用」には下記の制約があります。
- 引用部分を「 」で囲んだり前後1行あけるなどして,引用部分と引用以外の部分とが明確に区別できるようにすること。また,原文を正確に引用すること。
- 引用に際しては,出典を明示すること。書籍の場合は,著者名 『書名』 発行所,発行年について,雑誌の場合は,著者名 「論文名」 『雑誌名』 巻数号数,発行年,ホームページの場合は,著者名,「ホームページ名」,アドレスをあげる。
- 本人の主張が「主」で引用部分はそれを補完する目的であるという「主従関係」があり,かつ引用の必然性があること。
- 引用の分量は必要最小限にすること。
官公庁が作成した広報資料,調査統計資料,報告書,および著作権の保護期間(一般に著作権者の死後50年)が過ぎたものは出典を明示したうえで,自由に利用することができます。「引用」にあたらないものは,著作権者に転載の許諾をとってから利用することになります。