With TOP > VOL.62 SEPTEMBER 2009 > 

VOL.62 SEPTEMBER 2009

【学習サポート】

【現場から現場へ】

【10・11月科目修了試験のご案内】

【冬期IIスクーリングのご案内】

【オンデマンド・スクーリングのご案内】

【お知らせ】

【学習サポート】

教員MESSAGE [福祉法学ほか]
福祉法学・更生保護制度論スクーリングを受講した皆さんへ

准教授 菅原 好秀

 福祉法学・更生保護制度論を受講されました,仙台会場・札幌会場・新潟会場・東京会場のみなさん,大変お疲れ様でした。法学部の学生が4年間かけて学ぶ内容を3日間でマスターすることで,かなり知的空間が広がったことと思います。

 さて,講義では,憲法・民法をはじめ,成年後見制度,更生保護制度を具体的な事例や犯罪白書を踏まえて講義をさせていただきました。来年度の社会福祉士・精神保健福祉士の国家試験の法学の名称が,「権利擁護と成年後見制度」「更生保護制度」になります。平成20年度版の高齢社会白書によれば,65歳以上の高齢者人口が5人に1人という本格的な高齢化社会になっています。こうした高齢者が増えている暮らしの中で,孤独・孤立化が進み経済不安が増大し孤独死や高齢者が犯罪に巻き込まれるケースが増大しています。また,高齢者自身による犯罪の増加が顕著になっています。こうした現状において,高齢者の問題は,刑事司法機関だけでは対応しきれないため福祉関係機関との協力体制の確立が急務となってきました。社会福祉専門職のための法学は,弁護士などの法律の専門知識までは要求されていませんが,今回の社会福祉士養成課程の教育内容の見直し案には,「当該担当者への橋渡し」「総合的かつ包括的に援助していく役割」「ネットワークの形成を図る」ことが明記されています。

 このことは,福祉課題を抱えた利用者からの相談に対しては,専門領域外であったとしても,たらいまわしにせず,必要としている担当者までコーディネートし,または,その担当者を探し出し,その担当者とネットワークを形成して,総合的かつ包括的に利用者に援助することが,社会福祉専門職に求められている,ということです。そのためには,法律家のような専門的な高度な知識の修得を目的とするのではなく,どの法律に何がかかれていて,どのような意義があるのか,という最低限の法学の知識が求められている,ということです。社会福祉専門職として要求される幅広い法学の知識の活用が今後,期待されていることを意味しているのです。

 次に福祉法学・更生保護制度論のレポートについてですが,法律は,基本的には,条文の制度趣旨,次に判例が重要な位置を占めています。特に判例は,裁判官が当該事案の事実認定をするために,通常は1年以上,弁護士や検察官との弁論過程や証人による証人尋問の過程を通じて,裁判官が精査し,裁判官の良心と経験と過去の判例(先例)と社会通念にしたがって,当該事案に対して心証形成し,複数の裁判官の合議制によって判決を下しています。日本国憲法が改正され,または社会情勢が大きく変化する場合を除いて,一度判決が下されると,今後の同種類型の事案に対しては,当該事案に関する訴訟関係者および社会全体を拘束します。判決そのものが,社会的行動規範として客観性を有する点で社会科学的な視点をもつといえます。この判例の見解について自分の考えを論じることが大切です。

 最後に,大学で学ぶ意義は,正解が用意されている受験勉強とは異なり,学問の本質を発見し,問題解決の仕方をマネジメントし,自分で探っていく過程の中で自己研鑚することです。レポートの課題をインターネットの検索サイトで内容をコピーし,貼付して課題を終了するということは,学問の本質から大きくかけ離れています。図書館で関係する何冊もの文献を探し,参考文献の欄に文献を調べたページまで明示し,熟慮に熟慮を重ねたレポートは実に生き生きとしています。そもそも,字体や文章の流れそのものが自信に満ち溢れています。

 世の中には,真の救済を求めている人たちはたくさんいます。大学で学んだことを駆使して,説得力と思いやりをもち,相手の立場を理解できる大きさを兼ね備えた意義を学ぶ知的空間が大学であり,その知的空間で仕事をしながら,社会の人びとを幸せにするために,努力している皆さんのお役に立てることが私の価値ある使命であると考えています。

 法律は常に変容しているため,今後は,10月の「精神保健福祉論III」,11月の「家族法」,来年1月の「福祉リスクマネジメント」のスクーリングの受講をお勧めします。

 皆さんのさらなる発展を祈念しております。

1つ前のページへこのページの先頭へ