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VOL.57 JANUARY 2009

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レポートの書き方

教授 小 松  紘

 自分の考えをまとめて文章にすることは,ものを書くことを仕事にしている人は別として,一般には苦手意識を持っている人が多いようです。特に日記や手紙とは違う公の文書の場合はなおさらのことのように思われます。どのような公文書も作成者の意図をできる限り正確に,しかも分かりやすく伝えなければならないわけで,そこが詩歌や小説と役割を異にするところといえるでしょう。レポートも公文書と同様,正確で分かりやすいことが求められますが,さらに配慮しなければならないいくつかのポイントがあります。

1)レポートの構成

 文章を書く場合よく言われることに「起承転結」があります。これはもともと漢詩の絶句の構成様式であり,レポートをこれに無理にあわせることもありません。しかし,レポートは何らかの試みの報告ですので,まずその試みの意図・目的を述べ(起),どのようなアプローチ法を試みたか(承),そしてどのような結果になったか(転),その背景にはいかなる原因が考えられ,最終的にどんな結論に至ったか(結)という構成にすれば,「起承転結」が生かせます。実験報告の「目的,方法,結果,考察」のパターンもこれと類似した構成といえます。また,公の場で話をするときはまず最も言いたいことを述べ,その次にその理由を列挙するという話し方が分かりやすいと言われますが,実験報告のようにある程度パターンが決まっているのでなければ,この方式のレポートも分かりやすいと思われます。

2)客観性

 簡単な言葉でも意味がいろいろに解釈できたり,自分と関わりのある人たちにだけ分かるような主観的な表現はレポートには向きません。特に実験レポートにおける結果の記述の場合は,相対的な表現である「大きい-小さい」,「高い-低い」,「重い-軽い」なども書き手の主観なのか,客観的な裏付けがあるのか,用い方に注意しなければならない場合があります。表現に客観性が要求されるところでは,「A条件よりもB条件では半径がXcm大きくなった」とか,「……Ycm高くなった」,「……Zg重くなった」というように,数値をつけて客観的な表現をするよう心がける必要があります。

3)引用文献,参考文献

 レポートを書く際に出典を明示することは,著作権の問題もあり,大切なことです。通信教育部から配布されている『学習の手引き2008』のp.143〜144には出典明示の方法について詳しい説明がありますので,それに従ってください。

4)日頃のトレーニング

 以前から感じていたことですが,論文を書くときに小説や詩歌を読むと,なぜか執筆速度が速まるようです。これは私だけのことかと思っていましたら,私に限ったことではなさそうなので,いずれ確かめたいと思っています。私の仮説では,言語に関係する作業は大脳の左半球に関わることになりますが,論文やレポート,公文書などは,論理性が重視されるので,より左半球に依存する傾向が大になると思われます。その一方で,詩歌や小説は私たちの感情や感性を刺激し,大脳の右半球にも関わりを持つことになると推測されます。人間の心身の働きは,実は左右の大脳半球がバランスよく働いているときに,最もよくその機能を発揮すると言われます。例えば優れた音楽家では,素人や未熟な音大生が音楽を聴いた場合よりも,大脳の両半球にまたがった比較的広い領域が活性化されるそうです(Rentschler, I. et al. 1988)。

 日記を書いたり,小説を読んだり,詩歌を作ったり,是非いろいろやってみて下さい。

参考文献

Rentschler,I., Herzberger,B. & Epstein,D. 1988 Beauty and the Brain
-Biological Aspects of Aesthetics. Birkhoeuser.

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