学長コラム:正法
コラム No.13
永続する仏教と「正法」
東北福祉大学
学長 千葉 公慈
長い人類の歴史において、とりわけ18世紀のイギリスに始まる産業革命は、我々人間の生活とその価値観を大きく一変させた。以来、近年は周知の通り地球規模の環境問題、人口激減などの深刻な社会課題を抱えつつ、生成AIやデジタルマネーの登場など多岐亡羊にして不透明な現代に至っている。
以前も触れた言葉であるが、このVUCA(ブーカ)と呼ばれる時代の趨勢は、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)を内容とする。そしてこれらは実際、そのまま現代の哲学や学問にも相応するものと思われる。ただし、私はそれを失意のそれとは受けとめない。むしろ希望をもたらす契機と捉えている。なぜならVUCA時代の到来は、ある意味で過去の社会システムと常識とが瓦解する痛みをもたらす一方で、時代に相応しい新たな思想が求められ、その役割が構築される局面でもあるからだ。
それでは思想、就中、本学の建学の精神に照らし合わせれば、仏教という存在に求められる時代の役割とは何であろうか?
端的に申せば、その答えは“原点回帰”である。とはいえ、私は何も現代の僧侶は原始仏教の生活に戻るべきなどと毛頭考えてはいない。時代が仏教に要請するものは、必ずしもそこにはないからである。大切なことは、学問一般と同様に、仏教という思想哲学が、あるべき人間社会の指針となるのか、要するに教義と実践が現代人の心の救いとして機能し得るのかという人類の根源的な命題なのである。
かつてインド十六大国の時代、仏教を開いたゴータマ・ブッダは混迷を極める戦乱の世にあって最期のときを迎えていた。入滅より三か月ほど前となるある日、ブッダは軍事強国マガダの防衛大臣ヴァッサカーラに、戦争を諫める言葉を遺されたのだった。そしてすぐに翻ると仏弟子たちに向かい、仏教が永久に存続するための秘訣を伝えたのである。いわゆるこれが「僧伽(サンガ)の七不衰法」という教えである。「僧伽」とは仏教僧団のことであるが、私はこれからの新時代に仏教がその役割を果たすためは、この七つの要件が求められるべきと考えている。
⑴学ぶ者同士が互いに話し合って、意見を交換し合う場を設けること
⑵一致協力して正しく組織を運営すること
⑶正しく制定された約束ごとを守ること
⑷年長者たちの言に聞き従うこと
⑸人間の判断を惑わす愛欲や執着には気を付け、そこから離れること
⑹静閑を好み、自覚して独り思慮深く生活すること
⑺尊敬すべき求道者を守り、支えること
おそらく我々がこの原点に回帰するならば、自ずと「正法」(正しい教え)の体現者として正しく時代を切り拓くことになるだろう。元来「自利利他円満」といった極めて優れた思想をもつ仏教である。その可能性は大いにある。今こそ本学の掲げる建学の精神、仏教思想の教えが新世界の叡智の光となり、混迷する世を照らす主役となるときが訪れたのだと自負している。
以前も触れた言葉であるが、このVUCA(ブーカ)と呼ばれる時代の趨勢は、変動性(Volatility)・不確実性(Uncertainty)・複雑性(Complexity)・曖昧性(Ambiguity)を内容とする。そしてこれらは実際、そのまま現代の哲学や学問にも相応するものと思われる。ただし、私はそれを失意のそれとは受けとめない。むしろ希望をもたらす契機と捉えている。なぜならVUCA時代の到来は、ある意味で過去の社会システムと常識とが瓦解する痛みをもたらす一方で、時代に相応しい新たな思想が求められ、その役割が構築される局面でもあるからだ。
それでは思想、就中、本学の建学の精神に照らし合わせれば、仏教という存在に求められる時代の役割とは何であろうか?
端的に申せば、その答えは“原点回帰”である。とはいえ、私は何も現代の僧侶は原始仏教の生活に戻るべきなどと毛頭考えてはいない。時代が仏教に要請するものは、必ずしもそこにはないからである。大切なことは、学問一般と同様に、仏教という思想哲学が、あるべき人間社会の指針となるのか、要するに教義と実践が現代人の心の救いとして機能し得るのかという人類の根源的な命題なのである。
かつてインド十六大国の時代、仏教を開いたゴータマ・ブッダは混迷を極める戦乱の世にあって最期のときを迎えていた。入滅より三か月ほど前となるある日、ブッダは軍事強国マガダの防衛大臣ヴァッサカーラに、戦争を諫める言葉を遺されたのだった。そしてすぐに翻ると仏弟子たちに向かい、仏教が永久に存続するための秘訣を伝えたのである。いわゆるこれが「僧伽(サンガ)の七不衰法」という教えである。「僧伽」とは仏教僧団のことであるが、私はこれからの新時代に仏教がその役割を果たすためは、この七つの要件が求められるべきと考えている。
⑴学ぶ者同士が互いに話し合って、意見を交換し合う場を設けること
⑵一致協力して正しく組織を運営すること
⑶正しく制定された約束ごとを守ること
⑷年長者たちの言に聞き従うこと
⑸人間の判断を惑わす愛欲や執着には気を付け、そこから離れること
⑹静閑を好み、自覚して独り思慮深く生活すること
⑺尊敬すべき求道者を守り、支えること
おそらく我々がこの原点に回帰するならば、自ずと「正法」(正しい教え)の体現者として正しく時代を切り拓くことになるだろう。元来「自利利他円満」といった極めて優れた思想をもつ仏教である。その可能性は大いにある。今こそ本学の掲げる建学の精神、仏教思想の教えが新世界の叡智の光となり、混迷する世を照らす主役となるときが訪れたのだと自負している。
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