学長室の窓

学長メッセージ:令和七年度 卒業式 式辞

 令和8年3月13日
本日は、総合福祉学部、総合マネジメント学部、教育学部、健康科学部、通信教育部、通学・通信の大学院、すべての卒業される皆さん、ご卒業並びに修了おめでとうございます。また、これまでご指導いただきました諸先生ならびに職員の方々、さらには大学生活をお支えいただきましたご家族、保護者の皆様には、心よりお祝いと感謝を申し上げます。

さて、卒業生の皆さん、本日はひとつの節目を迎え、数多の思い出が脳裏をよぎっていることと思います。春風そよぐあの入学以来、皆さんはどのような学生生活を送ってきたでしょうか。おそらくは、一生の付き合いとなるであろう大切な友人や恩師との出会い、深夜まで机に向かって励んだ国家資格試験の勉強、血のにじむような厳しい練習を重ねた部活動、高齢者や患者さん、そして子供たちにそっと手を差し伸べた実習活動、先生や友人たちと楽しく学問を深めたゼミ、被災地を訪れ、力を合わせて取り組んだボランティア活動…。こうした本学でのかけがえのない実践的な学びが、きっと皆さんのこれからの人生を切り拓いてくれることでしょう。

本学の建学の精神は、そうした人間の生き抜く力を呼び覚ます「行学一如」であります。すなわち、その教えは在学中のみならず、卒業後の皆さんの一生を支える理念に他なりません。とりわけ皆さんが歩むこれからの時代は、現代的にも様々な社会課題が山積する、先行き不透明な世の中が待ち受けていることでしょう。しかし皆さん。それだからこそ、あたかも暗闇を照らすかがり火のごとく、ぜひとも母校、東北福祉大学の「行学一如」の教えを世にかざしていただきたいのです。なぜならその教えの源は、今から150年前、日本が近代国家に生まれ変わる激動の明治維新の頃、どのような時代であっても力強く生き抜いて欲しいとの願いを込めて掲げられた真の教育理念だからです。

それは西郷隆盛の終焉をもって西南戦争が終結する2年前、長い江戸時代が終わり、いまだ世情は混沌とした明治8年に、本学の前身、栴檀学林は、曹洞宗専門学支校として産声を上げました。それからほどなくした明治24年のことです。現在の岐阜県から名古屋にかけて、マグニチュード8.0という巨大な地震、濃尾地震が発生したのです。当時、7,273名もの尊い命が失われ、実に14万2千戸におよぶ家屋が倒壊、焼失した大地震でした。この悲惨な大災害に一人の人物が立ち上がります。それが大内源太右衛門という人物です。仙台の呉服商「大内屋」の8代目の店主であった彼は、居ても立ってもいられず、被災者の生活支援と復興のために、仙台から遠く名古屋へと向かったのでした。するとその支援活動の傍らで、家族も家も、すべてを失った24人の孤児たちに出会います。日頃から福祉の志が厚かった源太右衛門は、甚だ子どもらを哀れに思い、彼らを引き取って衣食と住まいを施し、まるで我が子のように育てたのです。ときはあたかも明治20年、みちのくに初めて鉄道が敷かれ、念願の仙台駅が開業したばかりでした。日々、父母を思いながら、故郷を離れて涙にくれる幼子に胸を痛めた源太右衛門は、子どもらの亡きの供養のため、そして仙台駅前の発展を願いつつ、一緒に街路樹を植えたのでした。実はこれが世に杜の都と称される、仙台の街路樹の始まりです。家族を亡くして寂しく思う彼らは、どれほど慰められたことでしょう。かくして源太右衛門は、子どもたちと街路樹の成長を見ながら、やがて学校教育にも志を施すようになります。生来、信心深かった源太右衛門は、熱心な曹洞宗の檀家でもありました。そのころ、立ち上がったばかりで仙台市内の泰心院というお寺の境内を間借りしていた栴檀学林には、明治政府から基本財産が乏しいとの厳しい指導を受けていました。それを憂いた源太右衛門は、自身の莫大な私財を投げうって、泰心院わきに広大な土地を寄進したのです。こうして、名実ともに我が学校法人栴檀学園は、はじめて学校としての独り立ちを果たすことが出来たのでした。本年度は学園創立150周年、その大きな節目に当たり、この明治の大内源太右衛門という福祉と教育の志熱き大恩人へ、心から感謝の誠を捧げたいと思います。そして、まさに今年卒業される皆さん、お一人おひとりが、「令和の大内源太右衛門たれ」と激励するものであります。

思えば、人類の歴史は、この大内源太右衛門のような熱い思いをもった人々によって切り拓かれてきたものでした。たしかに、世情を見渡せば今、止まらぬ少子高齢社会に地球規模の深刻な環境問題、自然災害、さらには痛ましい戦争が現実に起きています。あまりにも厳しいこの現実を前に、はたしてこれから世の中はどうなってゆくのだろうと不安な気持ちになるかも知れません。しかし、不安な時代だからこそ、あえて申し上げましょう。本学を巣立ちゆく皆さんが、まさに活躍する時代なのです。何ごとも失敗を恐れてはなりません。失敗は人生につきものです「もう無理かも」と思ったら、その後は何も続きません。失敗しても失敗しても、何度でも立ち上がる。大切なのはそう、何度でも立ち上がること。その失敗から何かを学ぶことが出来たなら、それは最高の宝を手に入れたことになるのです。

皆さんは、幼くして東日本大震災と、その後の復興という経験を歩まれ、さらには福祉・教育・心理・医療の学問をしっかりと身につけた、誇り高き本学の卒業生、修了生です。いざ、堂々と時代の旗手となり、「行学一如」と「自利利他円満」の教えをもって、日本をそして世界を導いていってください。皆さんなら、その力と資格があるのです。

われらが東北福祉大学は、これからも皆さんにとって一生涯の母校です。私たち教職員は、後輩たちとともに、いつでも皆さんをあたたかくお迎えしたいと思います。

皆さんのさらなるご活躍とご発展、そしてご健康を心から祈念して、以上、学長式辞といたします。

令和8年3月13日
学校法人 栴檀学園
東北福祉大学 学長 千葉 公慈

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