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VOL.37 AUGUST 2006 【学習サポート】 【現場から現場へ】 【9月科目修了試験のご案内】 【秋期スクーリングI・II・IIIのご案内】 【通信制大学院コーナー】 【10月生進級手続きのご案内】 【お知らせ】
【卒業と資格・免許状取得のために】
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【現場から現場へ】[関連施設紹介] 口腔ケア室の取組み2─チームケア医療法人社団 東北福祉会 介護老人保健施設 せんだんの丘 食事は,味覚,臭覚,視覚や時に聴覚や触覚,場所や時間,趣向や感性を含めて「楽しく」したいものです。「せんだんの丘」では2006年4月からは,言語聴覚士を迎えることができ,これまで歯科衛生士による口腔内環境の充実に加え,口腔器官機能の回復を目指す次のステージに入ってきました。 ◆言語聴覚の視点から〜コミュニケーションの重要性大森 私たちのケア環境では,利用者−職員,職員−職員,利用者−利用者,利用者−家族,施設−家族の中でコミュニケーションが行われていますが,ケアは,どのような場合にも相互方向性が必要といわれます。口腔ケア室のスタッフとしてコミュニケーションに大切と感じていることについてお聞かせください。 熊谷 はい,私は,利用者個々の利用状況,つまり,おひとりおひとりの生活をトータルにとらえることがとても重要だと思います。言語聴覚の言語と聴覚そのものが一般的にいわれるコミュニケーションの主体ですが,感性を含めたノンバーバルなコミュニケーションもどちらが主体ということなくトータルに必要ということが重要と考えています。 大森 具体的にどのようなことでしょうか。 熊谷 たとえば,言語聴覚にかかる器官機能のアセスメント(評価)から訓練プログラムを立案することになりますが,口の中の環境が整わなければ,発声も発語も食事もままなりません。せんだんの丘では,口腔内環境が歯科衛生士によって確立されていますので,口腔内環境が整っている中でリハビリテーションに関われることは,すばらしいと思っています。 ◆言語聴覚の視点から〜チームケア大森 コミュニケーションをチームケアという視点からどのようにとらえアプローチしていくと効果的と思いますか。 熊谷 一日も早くお顔と名前,状態をとらえたいと思い,ドクター(施設長)の回診時に同席させていただきました。口唇,口腔内器官の運動状況から摂食嚥下の状態を1カ月半の間でおおむねの把握ができました。もちろん食事介助も食後の歯磨きなど,歯科衛生士やユニット職員と一緒にケアに加えてもらいました。たとえば,目標をスムースな発声と摂食においたとしましょう。そこで食事に関してですが,咀嚼状態に対して (1)どのような形態での食事がよいか。(2)どのくらいの間をおくとよいか。(3)どのような食事の提供回数が望ましいかなど,その方にとっての最善を前提に,管理栄養士やケアワーカーからこれまでの経過をお聞きしてきました。一緒にかかわるということがコミュニケーションであり,チームケアであると思います。 大森 とても大切ですね。職員間の連携は,利用者にとっての安心であり,「自分のことを考えてくれている」という信頼,心身の向上や意欲につながりますからね。目標をいつまでに,どこに設定するかも職員間の連携からつくられてきますね。 熊谷 簡単に表現すると,「笑顔が見たい」。その一言ですね。そのために連携が必要なわけで,せんだんの丘では,病院で行っているリハビリSTとは異なり,ユニットに曜日を決めて固定してかかわる方法をとらせてもらっています。もちろん,発語・発声,口腔内のリハビリに携わりますが,外出など食事介助や歯磨きにも携わります。 ◆ユニットの運営と口腔ケア若生 口腔ケアの領域は,器官機能の評価が入ることになり,質実ともに確実に利用者の皆様にプラスになっています。歯科衛生士についての評価をいただけたのは,ユニットのワーカーの皆さんの普通の生活を志向してきたこととリハスタッフの日常の生活そのものがリハビリという追い風に守られたからと思っています。 大森 利用者の皆さんの食事,ブラッシングを終えてからの昼食になっていますね。 小野 私も同じですね。当たり前のことがこれほど大切かということを実感しています。 大森 ユニットでの気づきは,ストレートに改善していくことになっているでしょうか。どこの施設でもこれまでのケアの積み重ねがあるので,私の経験では,一気に加速しにくい面もあるのではと思うのですが。 若生 それは,自然なことと思います。ケアプランは,看護計画,リハビリ計画,栄養マネジメント,経口移行・経口維持計画,口腔ケアについても包含した位置づけになっています。気づきが,即,実行できることも,優先順位というバランスの力が働くことも現実です。 小野 交代勤務によるため,特に相互理解が必要ですね。 大森 そうですね。経口移行・経口維持・栄養マネジメントや各種リハビリテーションなど専門性と多職種協働が求められています。ユニット方式の施設ケアを採る施設が増える中で,「かかわる時間」「かかわり方」をどのように充実していくかというケア管理が課題となってきているということがいえるのではないでしょうか。 今回は,言語聴覚士を交えて口腔ケアのチームケアとコミュニケーション,ユニットへのアプローチについて,スタッフがそろいながらも新たな課題にチャレンジするユニット運営の一面を対談の中からご紹介しました。次回は,栄養士を交え,口腔ケアの対談を続けます。 追伸:「せんだんの丘」の施設見学をご希望された方とお会いできるのを楽しみにしております。 本学関連施設であるせんだんグループの取組みが一冊の本になっています。ご関心のある方は是非ご一読ください。 大竹 榮(監修) 千葉喜久也(編著) 『「21世紀型福祉」への挑戦──東北福祉大学・せんだんグループの取り組み』 ぎょうせい,2005年 定価1,500円 |