履修と研究の方法

V 修士論文

1 研究の進め方

 修士論文の完成までには,(1)先行研究・文献にあたりながら,問題意識・目的や枠組みなどを明確にしていく,(2)方法論にもとづいて,データを収集・分析し,考察する,(3)論文を執筆するといった手順が必要になります((2),(3)については,並行する場合があります)。

論文作成準備

 修士論文について本格的に取り組み始める時期は,指導教員が決定してからとなります。
 どのような研究法をとり,どのような論文構成をよしとするかは,専攻分野や指導教員から充分な指導を受ける必要があります。しかし,それに先立ち基本的な論文の書き方や方法論については,下記のような図書で身につけてください。

●論文執筆全般

 論文の書き方については,下記のような書籍が参考になります。

河野哲也著 『レポート・論文の書き方入門』慶應義塾大学出版会,1997年
櫻井雅夫著 『レポート・論文の書き方上級』慶應義塾大学出版会,1998年
木下是雄著 『レポートの組み立て方』ちくま学芸文庫, 1994年
斉藤 孝著 『増補 学術論文の技法』日本エディタースクール出版部,1977年
ウンベルト・エコ著 『論文作法』而立書房,1991年
川村匡由著 『福祉系学生のためのレポート&卒論の書き方』中央法規,2002年
ダン・レメニイ他著 『社会科学系大学院生のための研究の進め方』同文舘出版,2004年
新堀 聡著 『評価される博士・修士・卒業論文の書き方・考え方』同文舘出版,2004年

●研究の方法論

 研究を進めるにあたっては,方法論を意識して行うことも大切です。観察法,質問紙法,検査法,面接法,実験法,フィールドワーク,事例研究,臨床研究,実践研究,文献レビュー法などの方法があります。下記の書籍を参考にしてください。
 また,研究対象者へのインフォームド・コンセント,プライバシーの守秘義務など研究の倫理も遵守する必要があります。

社会福祉学分野

星野貞一郎・金子 勇編著 『社会福祉調査論』中央法規,2002年
佐藤泰正・徳田克己編著 『社会福祉研究の課題と方法』田研出版,2001年
田代国次郎・大和田猛編著 『社会福祉研究入門』中央法規,1995年
花村春樹・田代国次郎編著 『社会福祉研究の課題』ミネルヴァ書房,1973年
マーテンズ,D.M.・マクローリン,J.A.著 中野善達ほか訳 『障害児教育の研究法』田研出版,1995年
立石宏昭著 『社会福祉調査のすすめ』ミネルヴァ書房,2005年
畠中宗一・木村直子著 『社会福祉調査入門』ミネルヴァ書房,2004年
平山 尚他著 『ソーシャルワーカーのための社会福祉調査法』ミネルヴァ書房,2003年
岩田正美ほか編 『社会福祉研究法』有斐閣,2006年

福祉心理学分野

高野陽太郎・岡 隆編 『心理学研究法』有斐閣,2004年
W.J.レイ著・岡田圭二訳 『エンサイクロペディア 心理学研究方法論』北大路書房,2003年
丹野義彦編 『臨床心理学研究法』誠信書房,2004年
田尾雅夫・若林直樹編 『組織調査ガイドブック』有斐閣,2002年
南風原朝和・市川伸一・下山晴彦編著 『心理学研究法入門』東京大学出版会,2001年
南風原朝和・市川伸一・下山晴彦著 『心理学研究法』放送大学教育振興会(NHK出版),2003年
『心理学マニュアル 研究法レッスン』『心理学マニュアル 面接法』『心理学マニュアル 質問紙法』『心理学マニュアル 観察法』『心理学マニュアル 要因計画法』北大路書房,1997〜2002年
高橋順一ほか編著 『人間科学研究法ハンドブック』ナカニシヤ出版,1998年
日本発達心理学会監修 『心理学・倫理ガイドブック』有斐閣,2000年
『発達研究の技法』『臨床心理学研究の技法』『社会心理学研究の技法』『教育心理学研究の技法』『性格研究の技法』『認知研究の技法』(シリーズ・心理学の技法)福村出版,1999〜2000年
『心理学研究法』(1〜17)東京大学出版会
山本 力・鶴田和美編著 『心理臨床家のための「事例研究」の進め方』北大路書房,2001年
鈴木淳子著 『調査的面接の技法』ナカニシヤ出版,2002年
末永俊郎編 『社会心理学研究入門』東京大学出版会,1987年
やまだようこ編 『現場(フィールド)心理学の発想』新曜社,1997年
松井 豊著 『心理学論文の書き方』河出書房新社,2006年
都筑 学著 『心理学論文の書き方』有斐閣アルマ,2006年
杉本敏夫著 『心理学のためのレポート・卒業論文の書き方』サイエンス社,2005年

その他

小林康夫・船曳建夫編著 『知の技法』『知の論理』『知のモラル』『新 知の技法』東京大学出版会,1994-1998年
佐藤郁哉著 『フィールドワークの技法』新曜社,2002年
佐藤郁哉著 『フィールドワーク』新曜社,1992年
箕浦康子編著 『フィールドワークの技法と実際』ミネルヴァ書房,1999年
グレイザー,B.G.ほか著 『データ対話型理論の発見』新曜社,1996年
田尾雅夫・若林直樹編 『組織調査ガイドブック』有斐閣,2002年

 なお,データ処理に,統計的手法を必要とする場合は,統計の入門書も参考にしてください。統計の基礎を学ぶものとしては,下記の書籍がお勧めです。

櫻井広幸・神宮英夫著 『使える統計 Excelで学ぶ実践心理統計』ナカニシヤ出版,2003年
吉田寿夫著 『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』北大路書房,1998年

●著作権への配慮

 すべての「表現」には著作権があります。先行研究を利用する際には,他者の著作権を侵害することのないように配慮してください。
 「引用」にあたるものは,著作権者の了解を得ることなしに利用することができます(著作権法第32条)。ただし,「引用」には下記の制約があります。

  1. 引用部分を「 」で囲んだり前後1行あけるなどして,引用部分と引用以外の部分とが明確に区別できるようにすること。また,原文を正確に引用すること。
  2. 引用に際しては,出典を明示すること。書籍の場合は,著者名 『書名』 発行所,発行年について,雑誌の場合は,著者名 「論文名」 『雑誌名』 巻数号数,発行年,ホームページの場合は,著者名,「ホームページ名」,アドレスをあげる。
  3. 本人の主張が「主」で引用部分はそれを補完する目的であるという「主従関係」があり,かつ引用の必然性があること。
  4. 引用の分量は必要最小限にすること。

 官公庁が作成した広報資料,調査統計資料,報告書,および著作権の保護期間(一般に著作権者の死後50年)が過ぎたものは出典を明示したうえで,自由に利用することができます。「引用」にあたらないものは,著作権者に転載の許諾をとってから利用することになります。

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