社会的・職業能力育成プログラムに資する認知・脳科学的エビデンス情報提供基盤の構築

研究メンバー

研究代表者

小川 誠二

東北福祉大学 特任教授

プロフィール詳細

グループA 先端的fMRI測定法の開発

成 烈完

東北福祉大学 特任准教授

姜 大勲

東北福祉大学 特任助教
私はMRI測定シーケンスの開発とMRI画像処理に関する研究を行っております。戦略事業では、より精度の高い測定方法の開発をしております。

亀井 裕孟

東北福祉大学 特任研究員
私は言語処理にかかわる脳の働きについて研究をしております。音素、単語、そして、文章処理にかかわる脳の部位の検索と言語処理過程でそれらの部位がどのように協力しあうのかについて調べております。戦略事業では、学習・訓練などに関与する言語関連脳部位の検索とそれらの部位がいかに変化するかを追跡しております。

山本 絵里子

東京大学 特任研究員
私は高精度測定法や新たなデータ分析法等を含む脳機能イメージング技術の開発に関する研究を行っております。戦略事業では、特に、学習・訓練と身体動作にかかわる知覚機能について研究をしております。

幕内 充

国立障害者リハビリテーションセンター室長
私は言語処理にかかわる脳の働きについて研究をしております。音素、単語、そして、文章処理にかかわる脳の部位の検索と言語処理過程でそれらの部位がどのように協力しあうのかについて調べております。戦略事業では、学習・訓練などに関与する言語関連脳部位の検索とそれらの部位がいかに変化するかを追跡しております。

姜  東植

琉球大学 准教授
私は与えられたデータから特徴を抽出する手法の開発及び応用について研究をしております。戦略事業では、心理データ及び脳画像データから学習・訓練などによる変化を表現する特徴要素を抽出するプログラムの開発を行っております。

グループB1 加齢・職業経験の異なる集団の認知・脳機能を比較する横断研究

藤井 俊勝(ふじい・としかつ)

経験は、脳をどう変えるかー適応性の一端を探る〝記憶の専門家〟

東北福祉大学健康科学部兼感性福祉研究所教授
医学博士。専門は認知脳科学
——まずは、プロジェクトの縦断研究と横断研究についてですが
(Cグループの)河地先生が中心になって行っているのが、大学に入学して3年教育を受けるとして、複数の同じ被験者に3年間心理テストを続けて、学習成績が上がってきたときに脳がどう変化しているかを見る。学科によっても学ぶことが違うので、脳に違う変化が起こっているかもしれない、と。これが縦断研究です。
一方、同じ職業を続けてきた人、例えば医師や看護師を20年やった人と、一般の会社員を20年やった人では、血を見て「ドキッ」とする反応が変わるかもしれない。銀行マンを20年やった人とそうでない人では、数字を見たときの脳の反応が違うかもしれないという、継時的でなく一定的時間が経ったときに見比べるのが、(Bグループの)横断研究です。
——それを踏まえて、今行っている研究を説明していただくと
一緒に庭野先生と田邊先生とやっていますが、その1つが、保育実習に行く人と行かない人、行く前と行った後で、乳幼児の写真を見たときの脳の反応が、どう変わるか。保育実習に行く約30人と、行かない約30人の脳をMRIで撮影して見比べています。少し、縦断研究にも入っちゃいますが(笑い)。
保育実習を終えて帰ってきた人と、実習に行っていない人で、違いが出ているとおもしろい。子どもを産んで子育て経験がある人と、そうでない人の比較ができれば一番わかりやすい結果が出そうですが、これは被験者を集めるのがなかなか大変だと思いますから。
——プロジェクト参加のきっかけは
福祉大に来て3年半になりますが、前のプロジェクト(平成20年度文部科学省戦略的研究基盤形成支援事業「児童青年期精神障害および高齢者関連疾患における先進的個別化予防ケアシステムの構築に関する研究」)のときから、外部参加していました。そのうちの1つに近い今回の研究は、MRIという手段を中心に据えています。
——脳の研究に携わるようになったのは、いつから
もともとは神経内科の医師で、認知症など脳に関係した病気が専門でした。24歳から37歳まで大学病院から現場に派遣されて、半年か1年で病院を異動する生活でしたね。脳卒中の患者さんをみていると、脳のある場所が壊れると特殊な症状が出てくる。不思議だな、と思っていたら高次脳機能障害室が東北大学にできて、37歳で戻った。そのときから研究の方が中心になりました。
1990年ころからPET(陽電子放射断層撮影)やMRIで脳の血流が測れるようになって、健康な人の、壊れていない脳の研究もできるようになってきた。2000年代からは、機能的MRI(fMRI)を使うのが主流になりました。「高次脳機能」には、言葉、記憶、注意力、物をみて認識するとかありますが、中でも記憶に関してはずっとやっています。例えば、何を言ったかは覚えてるんだけど、誰にいった、聞いたとかは忘れてることってありますよね? そのときでも記憶は、話の内容を最低でも「覚えている」「思い出す」と脳を2回使うんですよ。
——やっぱり、学生時代からこの分野を目指そうとしていたんですか
高校のころは「バンドでメシを食ってやる」って感じでしたね。ギターとベースをやっていました。(流行っていたのは)世代的に、ビートルズもローリングストーンズも終わって、イーグルス。ただ普通の家庭に生まれたので、親に「何か資格を取りなさい!」と言われて、医学部に進んだ(笑い)。当時から脳や心理には興味を持ってはいましたけどね。もちろん、大学でもバンドは組んでいましたよ。
——研究をやっていて、どんなときが楽しい?
ちゃんとした結果が出て、外国の雑誌に受理されたときですね。研究って、だいたい最低でも3、4人のチームでやるんですが、それも楽しい。今は全般的に研究者の人手が少ないんですよね。研究する人が増えるといいなあ、と思っています。
今回のプロジェクトに関して言えば、まずは2つのグループの比較で、一義的でも違いを見つけることが大事だと思っています。差が出ないと、何も結果が出ないのと同じ。比較して差が出た場合でも、事前に認知・性格テストをやっているので、その成績とどう関連しているのか。(発表できる)結果を出そうとしたら、いろいろなことをやっていかないと。最もいい結果が出れば、いい雑誌に乗るだろうし、大したことがなければそのレベルの論文にしかならないし、何もなければどこにも出ない。とにかく今は、結果が出てほしいですね。

庭野賀津子(にわの・かつこ)

実習、学習がもたらす脳の変化を、発達心理学的見地から解明する

東北福祉大学教育学部教授
教育学博士。言語聴覚士・臨床心理士。専門は言語聴覚障害学、臨床発達心理学。
学内外の公的な職務も多く、執筆活動も行うなど精力的
——今回のプロジェクトでの、先生の研究と目的を教えて下さい 
もともとコミュニケーション発達の研究をしていました。お母さんと赤ちゃんの関わりを通して言語やコミュニケーションが発達していく事象を、音響分析を使って物理的な定量データを用い、心理学的に解明していくというものです。
ただ、脳から調べないと分からない部分が多いのです。表情など赤ちゃんが発信する情報を大人がどう受け止めているか、これまでは、NIRS(ニルス、近赤外線分光法)を使って、脳のどこが活性化するかを調べてきました。NIRSですと被験者に負担をかけずに測定できますが、脳の表面、大脳皮質の血流しか見られません。
脳の賦活(ふかつ)、どこが活発に動くかは、実際は表面だけでなく、深部でいろいろと起こっています。今回のプロジェクトではfMRIを使って、赤ちゃんが発する情報をどう処理し、感情面でどういう動きが起きているかを、脳科学的に解明するのが目的です。
——研究はどう進めていく予定ですか
保育士等の専門的職業人を養成するための現場実習の前後で、脳機能にどう変化が起きるか。さまざまな要因との関連の解明も検討しています。近いうちにその成果を国際会議で発表する予定です。海外へもどんどん発信していきたいと考えています。
脳機能というのは、それぞれの部位が単独でなく、ネットワークで動いています。今回のプロジェクトでは、職業や育児において、脳内ネットワークが変化したり、また形成したりしていく事象を解明できると思っています。fMRIのボールド信号は、実際の神経活動より少し遅れて捉えられるので、事象関連電位などによる測定もしていきたいですね。
——ところで、先生の専門は?
専門は臨床発達心理学です。発達というものは、大人になっても続くんですよ。大学生や社会人になっても、学習や環境によって変化します。これを発達的変化と捉えて、発達心理学的アプローチをもとに脳科学で解明していきたいと思います。
多くの人がいずれ親になっていきますが、その「親性」がどう発達していくのか、今は興味を持っているところです。「相互作用」もキーワードです。親も子どもも互いに影響を与え合い、相互作用しながら発達していきます。両者の発達を見ていければ、と思っています。
——脳の研究に至るきっかけを教えて下さい
大学で言語障害を専攻しておりましたが、言語障害というのは、そもそも脳の高次な機能障害ですので、言語障害を学ぶためには脳科学を学ぶ必要があります。ですから、今、脳の研究をしていることは、私にとっては自然な流れだったと思います。
また、大学在学中に1年間、国費留学により米国で発達心理学を学びました。心理学というのは、日本では文系の学問として捉えられがちですが、米国では理系の学問として位置づけられています。そのため、心理学の研究をするには、理系的なアプローチが必要であることを実感しました。日本では、心理学の分野で脳科学の研究をする人はまだまだ少ないので、心理学系の学会でも研究成果を発信していきたいと思います。
大学卒業後は数年間、養護学校、聾学校の教員をしていました。障害児の心理や行動を理解するには、表面だけではつかめません。言葉を発しない子どもさんが、例えば手を少し動かすなどの、微弱な発信をするときがあります。それをどう捉えてどう解釈するかは、こちらの主観でなく、科学的に、分析的に捉えないといけない、もっと心理学を勉強しなくては、と思いました。
——教員から研究者になろうとしたのは、いつからですか
自分の子どもがまだ小さかったころ、夫が理系の研究者ということもあって泊まり込みで実験にとりかかることも少なくなく、子どもが病気のときにはたびたび私が仕事を休まざるを得ませんでした。そこで、2人目の出産を機に、育児のために教員をやめたんです。数年間自分のキャリアにブランクを空けてしまいましたが、その時間を学ぶチャンスに変えようと大学院に通い、母子のコミュニケーションの研究に取り組み始めました。学位を取得した後は、教員ではなく、研究者という立場から障害児教育の現場に貢献していきたいと思うようになりました。
学校現場の先生には経験から来る原理原則があるかもしれませんが、特に障害児教育においては科学的なデータやエビデンスをもって教育しないといけないと考えています。(教育学部の)自分のゼミでは教員を目指している学生が多いですが、そのゼミ生にも、脳科学の基礎を学ばせ、科学的な視点を持つことの大切さを教えていますよ。

田邊 素子

東北福祉大学 准教授
私どものグループでは、子育て中の保護者に焦点をあてた研究を行っています。育児中に感じた経験や疑問を活かしつつ、脳機能画像という手法を通し育児に関係する神経基盤を明らかにすることで育児支援の新たな展開を目指していきたいと考えます。

河村 孝幸

東北福祉大学 准教授
本学の予防福祉健康増進推進室が主催する運動教室では、手足を動かす運動と知的課題を組み合わせた複合型運動プログラムを導入しています。このような複合型運動の得意、不得意と脳機能との関係について明らかにしたいと考えています。

奥田 次郎

京都産業大学 教授
人間の認知や記憶に関わる脳活動を機能的MRIにより調査する研究に加え、脳波や視線計測を用いた脳認知情報の解読と個人の脳機能向上補助のための介入方法の検討を行っています。

月浦 崇

京都大学 准教授

阿部 修士

京都大学 特定准教授
私はこれまで、主に人間の意思決定をメインテーマとして研究を進めてきました。本研究プロジェクトでは微力を尽くしたいと思います。

グループB2 パーソナリティの異なる集団の認知・脳機能を比較する横断研究

小松 紘(こまつ・ひろし)

脳の「理解」を理解する、心理学からのアプローチ

東北福祉大学名誉教授
専門は認知心理学。
2015年3月まで本学総合福祉学部福祉心理学科教授で、
1977年から84年まではテニス部部長を務めた
——このプロジェクトでの役割を教えてください
今は個別テーマで研究にあたっていますが、私の場合は、「『理解』の認知科学的研究ー特に『意識』の覚醒度と集中度の視点から」。全体では、社会的・職業能力を育てるプログラムをつくろうとしていますが、その中で私は心理学的領域なので、認知科学的方法論をとっています。職業能力が育つためには、理解能力が育たないといけない。その「理解」も、いろいろな影響を受けますが。
——具体的に、「理解」が受ける影響とは
例えば、一番身近なことでいえば、目覚め具合、覚醒度合いですね。起きてぼーっとしているときに、いろいろ言われてもよく頭に入らないでしょう? かといって、興奮状態のとき、いわゆるパニック状態のときも正確な「理解」とは無縁な状態にいます。
その関係は、縦軸をパフォーマンス、横軸を覚醒水準として逆U字曲線を描く「ヤーキーズ・ドッドソンの法則」で示されています。ちょうどいい水準の目覚めの状態が、いい理解を進めるんです。理解に、アラウザル(覚醒)や不安がどういう影響しているか、この極端なケースをまずは抑えて調べようとしています。
2つ目は注意力の問題。意識が対象に向いて情報処理ができて、初めて理解になる。これも不安や緊張の水準に影響を受けます。これらから仮説としては、「意識の適度な覚醒度と集中度が私たちの理解を正しく導く」というところになりますね。
——研究の進み具合はどうですか
今年の目的は、アラウザルや緊張、不安といった心的影響による理解の調査です。アラウザルや不安の水準の高低で、理解の水準をはかる。今はまだ紙ベースですが、すでに200人以上のデータをとりました。STAI(状態・特性不安検査)という不安を測るテストも使いながら、基本パターンのパーソナリティーを開放性、勤勉性、協調性、外向性、情緒の安定性の、いわゆる〝ビッグファイブ〟で被験者を分類して、それぞれの理解のしかたを見ていこうとしています。
来年はコンピューターを使った手法も行っていきたい。不安の、実験的測定法も使ってみようと思っています。蛇とか赤ちゃんとか、ある刺激を瞬間的に見せて反応をみる。提示されたシグナルに対する反応時間がそれぞれ違うと思うんですよ。フリッカー(光の点滅)をつかった測定法もつくりたい。「理解」の背景になるメカニズムを、理解の領域から調べようと思います。
——しかし、「理解」を理解する研究ですか。何とも、難解ですね
心理学の目的は、人間を理解すること。その「理解、って何」という、認知心理学の非常に重要な問題に立ち向かおうと思っています。それが分かってくれば、職業、産業的スキルを身につける大事なコツみたいなものが習得できるんじゃないかな、と。
——平成30年度いっぱいまでプロジェクト期間があります。今後はどのように研究を展開していくつもりですか
われわれのBグループは、横断的にパーソナリティーの特徴を見ていますが、今はすべて健常者が対象。ただ、中でも不安や覚醒度が極端に高い人もいる。そういうパーソナリティーを持った人が、能力を身につけていく過程でどういう問題が出るか、どういう配慮をしなければいけないのか。いずれは、クリニカルな領域に入らざるを得ないのかな、と思います。クリニカルな問題を抱えている人に、なんらかの助けというか、〝福音〟となるものを見つけられれば。そのサインを早期に見つける方法に出会えれば、最高ですね。
——ところで、研究をやっていてやりがいを感じるときは
覚醒度や不安、緊張を捉える技法はないか、と探していて、今年の2月かなあ。1970年代に仕事を始めたころの、色彩をテーマに視覚化処理を研究した自分のデータと、1987年の、アラウザルに関するインドの論文で、符合するところがあったんですよ。ずいぶん論文も読んできたつもりだったけど、40年経って「狙いの異なる人間が、地下水脈でつながっていたんだ」——と思うと、研究は面白い。
理解っていうのは、心理学の大問題。これを最後に取り組めるっていうのが、嬉しいねえ。この春に定年したけど、気持ちは30代、40代に戻りました。今からですよ。また、新たな勉強をしようと思っています。研究室でも「席どうぞ!」なんて、定年前より良くしてもらってるしね(笑い)。

浅野 弘毅

東北福祉大学 教授

松江 克彦

東北福祉大学 教授

滝井 泰孝

東北福祉大学 教授

グループC 個人の認知・脳機能変動を追跡計測する縦断研究

河地 庸介(かわち・ようすけ)

実験心理学とMRIで、大学教育の有為なプログラムを探る

東北福祉大学福祉心理学科准教授
博士(文学)。専門は実験心理学。
趣味は、周囲にあまり理解されない?現代音楽の鑑賞。
——専門が実験心理学ということですが、具体的にはどういう学問なのですか
実験(認知)心理学では、人の心の働きをコンピュータといったような情報処理システムという観点から捉えて、実験によって実証します。物理的刺激を与えた結果としての様々な人間の反応を測定して、人の心(情報処理)のメカニズムを調べます。
——心理学を専門分野とし始めたのは、いつごろからですか
大学で文学部に入って、1年生のときはいわゆる一般教養を学んで、2年時からコースに分かれた。そのときから心理学を学び始めました。昔は高校や中学の先生になりたいな、と思っていました。
教員志望は、実際に良い先生に出会ったということもあります。でも大学を選ばなければいけない高校3年の頃に、視覚心理学や脳科学について書かれている記事を偶然読み、人の心のメカニズムを脳という物質と関係づけながら理解するというところになぜだかわかりませんが引き付けられました。心と脳といった哲学的な雰囲気も魅力的に思えたのだと思います。そして、自分も是非やってみたいなと思い、その勢いのまま高校や中学の先生になるのはやめてしまいました。とはいえ、今は大学教員となり講義も行っていますので、ある意味教員志望というのは変わっていなかったのかもしれませんね。
——でも世間一般的な文系・理系の概念からすると、文学部出身で理系の研究をしてるのは不思議な感じがしますね
私個人としては理系や文系というのをあまり強く意識したことはありません。ただ自分の研究に必要なことをやっていたら、理系とも思われるような研究になっていたという感じです。実験心理学的研究をしていると、実験の結果からわかる様々な心の機能は脳でどのように実現されているのかなというように関係づけたくなります。その意味で、専門は心理学ですが、脳科学に抵抗感は全くありませんでした。
最近は脳科学をしている心理学者の方々も多いですよ。私自身、大学院時代に指導してくださった先生にPETやfMRIを使う研究を行う機会を頂いた1人です。今思うと、運がよかったのかなと思います。
——研究の中では、MRIも操作されている。高校のころから20年近く経ちますが、今の自分って想像できました?
どうでしょうね。でも、ここまで研究をやらせて頂ける環境で働けるとは思っていなかったと思います。
またここまで心理学をやり続けるということも想像していなかったかもしれません。大学のときに実験心理学、心理物理学といった非常にいい学問・方法を教えていただいたおかげかな、と思います。直接測れない曖昧な心を、物理的刺激を与えた結果として現れる行動から推定する。いくら調べても謎は次々湧いてくる感じがします。実験心理学と出会えて良かったなと。あきることはありませんね。
MRI研究は「脳の機能計測をやってみるのもいい」といわれて大学院からやり始めました。最初はPET研究でしたが、次第にMRIを用いた研究を行うようになりました。福祉大のように実験用にMRIを持っている大学は全国的にみてもそれほど多くないように思うので、福祉大はとても恵まれた環境だと思っています。
——改めて、今回のプロジェクトでの役割と目標を教えて下さい
今は質問紙や心理検査を使った実験が多いですが、MRIも成先生と一緒に最大限やっています。成先生は脳科学が専門で、僕は心理学が専門。成先生とは、脳のデータだけで心理特性が分かるプログラムをつくりたいね、と話しています。
心理テストだけでは客観性に乏しいと思われるところもあり、測れるのは基本的に自分自身でも意識できるようなことに限られます。一方で、MRIは、自分では意識することが難しいような情報を測ることができます。将来的に、心理データと組み合わせて、何か新しい情報を作り出すことができないかなと思っています。例えば、(被験者となる)学生さんが、自分で分からかなかった能力を知るきっかけを作れればと思っています。そのために、かなりの数の質問紙、心理検査などを使って心理データを取るとともに、様々な測定法を用いて脳計測を行っています。
大学教育によって心理特性、脳もきっと変化している。我々としても、それを実験を通して何らかの形で表現できないか。その表現を通して大学教育の効果を多少なりとも定量化できれば、と考えています。
なんにしても我々はデータがないと何もできません。質問紙や検査は10分程度で終わるものもあれば、2時間近くかかるものもある。数百人のデータをとっていますが、本当に学生さんに支えられて今回のプロジェクトが進められているなあ、と思っています。

坪川 宏

東北福祉大学 教授

大城 泰造

東北福祉大学 准教授

曽根 稔雅

東北福祉大学 講師
私は疫学の研究手法を用いて、個人の特性や生活習慣が病気や老化に及ぼす影響について研究を行ってきました。これまでに学んできた疫学の知識を活かして、本研究に少しでも貢献できるよう頑張りたいと思います。