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VOL.24 DECEMBER 2004

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[児童福祉論] 札幌スクーリングを終えて

助教授
千葉 喜久也

 北の大地「札幌」でのスクーリングは,私にとって始めての体験。やはり気になったのは,どんな方々が出席されるのか。また2,3日前に札幌では雪が降ったというが天候はどうだろうかなど,いつもながらに緊張と不安な気持ちで札幌に向かった。しかし,札幌に到着して,すぐに天候の不安はなくなり,冬に備え完全武装して乗り込んだ私の装備は見事に必要でなかった。靴は底の滑らない冬の靴,コートは防寒用の裏の厚い物,下着まで長袖のシャツと下ズボンを準備していったのに,……札幌は暑かった。北海道は観光に力を入れるといっていたが,それであったら私のような人の期待を裏切らないよう,北海道全土をクーラーで被うくらいの配慮をしてもいいのではと変な負け惜しみを考えていた。
 こんな思いの中でスタートしたスクーリングであったが,出席いただいた受講生の皆さんには裏切られることなく,私自身が充実した3日間を過ごさせていただいた。
 通信の講義が始まる前日は,いつもながら講義の準備と緊張でなかなか眠りにつくことができなかった。仕事の休暇をとり,家族の協力を得てスクリーグに来られる皆様の期待を裏切るような講義だけはしたくないとの思いが,自然と身体を緊張させるのであった。そして,今回のスクーリングも受講生の真剣な眼差しと,豊かな人生経験から来る真摯な態度は,講義をしている私を熱くさせ,休憩時間も忘れさせる3日間でした。また,休み時間や昼休み時間も惜しんで質問に来られる皆さんの思いに接して,私自身が忘れかけていた新鮮な感覚とたくさんの元気をいただきました。
 さて,今回の講義の組み立ては,子ども虐待を切り口として,「子ども家庭福祉の理念と実際」を学習することでした。具体的には,子どもを取り巻く現状を理解し,児童福祉の新たな理念としての保護から自立(自律)へ。子ども最優先の考えについて説明をさせていただきました。また,児童福祉法改正や児童虐待防止法などの説明を通じて児童福祉機関の実践なども紹介させていただきました。
 いつもながら思うのですが,児童福祉の歴史は決して楽しく明るかった歴史ではありません。子どもたちが虐げられて来た歴史です。そして,これは現在も続いています。ですから受講された皆さんの中には,気分が暗くなった方もいただろうと思います。でも,この現実を変えていくのが福祉であることも知って欲しかったことでもあります。
 受講された方の中に,「どうして先生は児童福祉に情熱をそそげるのですか」との質問がありましたが,私たちは,知らないうちに大人になり,子どもの気持ちを忘れてしまいます。今,大人の人たちが子ども時代の心を思い出し,子どもの心を取り戻したなら子どもの不幸のほとんどが解決されると私は思います。戦争も犯罪も大人社会の醜さが引き起こしていることで,社会のゆがみが子ども社会に反映して,たくさんの子どもの不幸がつくりだされていると思います。大人は「子どもを指導しなければならない。教育しなければならない」とよく言います。しかし,子どもから学ばなければならないのは,私たち大人かもしれません。子どもは生まれながらにして,人を差別しません。差別する心を教えたのは,私たち大人です。
 私たち大人は,今こそ自分の子ども時代を思い返し,自分にとっていやだった体験や辛かった出来事を子どもたちに伝えない努力をする必要があります。このことが唯一世代間連鎖を断ち切る方法だと思います。
 私に,こうした考え方を教えてくれたのが子どもたちです。しかも社会から遠ざけられ嫌がられた子どもたちから「先生 いいよ」と認めてもらい。「先生 大丈夫か」と気にかけてもらい,励ましを受けながら,私は生きてきました。だからこうした,少数のもの言わぬ子どもたちの思いを多くの大人に知って欲しい。また,高校を卒業して間もない10代後半,20代前半の若い皆さんには,子どもの気持ちと大人の気持ちの双方が理解できる人になっていただきたいと強く思っています。どうか今回受講されました皆さんが,今後,子どもの視点に立って物事を考える大人のひとりになっていただきたい。そして,地域の中で子どもたちが「子ども時代を十分謳歌」できるよう支援していただきたい。子どもは,大人になるために生きているのではなく,子ども時代の充実した生活の積み重ねが,結果として大人になっていくということを理解していただきたいのです。
 終わりに,今回も受講されました皆さんから,たくさんの励ましと,お礼の感想文を寄せていただきました。本当にありがとうございました。限られた時間での講義であるため説明不足のところや期待していた内容が聞けなかったなど,ご不満なところがいろいろあったと思います。それなのに「スクーリングに出席して良かった」と話してくださる皆さんの優しさに感動しました。秋田弁で聞き辛かったにもかかわらず「先生 いいですヨ」と言ってくださった皆さん。本当にありがとうございました。
 働きながら学び続けることは大変なことです。でも皆さんならできると思います。辛く,苦しくなったら思い出してください。自分が,これまで一番楽しかった時を。そして,一歩を踏み出してください。
 通信制の皆さんの,今後のご健闘を期待しております。本当にお疲れ様でした。いつの日か,また再会できることを楽しみにしております。

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