2020/09/07

教育コラム:オンデマンド授業における「合理的配慮」と「ユニバーサルデザイン」

初等教育専攻 大西孝志 教授(特別支援教育)

今年度は新型コロナウイルス感染症対策のため、授業の形態も大きく変わり、録画講義の視聴や同時双方向(本学の場合はGoogle Meet)方式等によるオンデマンド授業が行われています。
オンデマンド方式で授業を進めるに当たっては、聴覚障がいがある学生への情報保障の問題を解決する必要があります。

これまで本学では障がい学生サポートチームが中心となって、様々な方法でノートテイクを行っていました。1つ目は手書きによるノートテイクです。文字化できる情報量は制限されますが、要点を捉えて話の内容を伝えるには有効です。また、場所や機材の制約を受けることがないというのもメリットです。2つ目はパソコンによるノートテイクです。サポート学生2名が情報保障を必要とする学生と一緒に授業を聞き、教師の話をキーボードで文字変換をするシステムです。文字化できる情報は手書きに比べると多くなります。

ところが、今年度は「教室で授業が行われていない」「授業を聞くのは自宅で一人で」という、これまでのノートテイクの実施が困難になり、現在10名在学している情報保障を必要としている学生のために新たな方法を検討することになりました。

動画授業への字幕付け

リエゾンゼミにおけるオンデマンド(動画配信)方式授業の字幕。 画面下の背景が黒の部分が字幕です
以前は、授業の動画に字幕を付けるためには、教師の話をすべて聞き、それを手作業で入力する必要があり、莫大な時間がかかっていました。

今年度はVrewという動画音声を自動で文字化する無料ソフトを活用し、字幕作成の時間を大幅に短縮しています。誤変換を修正するため、確認の作業は必要となりますが、はじめから手入力で字幕を作ることを考えると作業量は大幅に減少しています。

いずれは障がい学生サポートチームの学生もこの方法を活用して、授業動画への字幕作成に参加できるようになることを期待しています。

UDトークを活用した情報保障   

同時双方向方式(GoogleMeet)授業におけるUDトークを活用した即時音声自動認識の様子。画面はUDトークのシアターモード機能を使ったもの。(本授業はデモ用に撮影したものであり、聴覚障がい学生はいません)
現在本学では、パソコンノートテイクと併用して、UDトーク(即時音声自動認識システム)による情報保障を行っています。これはマイクから入った教師の音声をAIが自動で文字変換してくれるシステムであり、みなさんの携帯電話(スマートフォン)にも同様の機能がついています。

話し手が、マイクを使って大きな声でわかりやすく話す、文章の区切りを意識して話すなどの配慮は必要ですが、近年、変換の精度は急速に向上しました。文章(新聞や学習指導要領など)の音読などで試してみると、ほとんど誤変換なく文字化することができます。

そこで、このシステムを同時双方向方式での授業に活かすことができるように、機器を揃えて、より効果的な情報保障の方式を試行錯誤しています。

オンデマンド授業とユニバーサルデザイン

今年度、動画授業を視聴した学生から以下のような意見がありました。

◯一時停止を押したり、聞き直したりすることができ、授業のペースを自分に合わせられる。
◯字幕があるとわかりやすい。
◯専門用語は聞くだけでは漢字が思い浮かばないことがあるが、字幕があると漢字も同時に入ってくるので理解しやすかった。
◯家族が近くで仕事をしている時など、字幕があれば、音声を出さずに講義を受けることができた。
 
いずれも聴覚障がいのない学生からの感想です。今年度は家族が在宅ワークをしていたり、兄弟がオンデマンドで授業を受けていたりするという場合も考えられます。その際にも字幕が役立っていたというのは意外でした。また、講義内容の理解の助けになるというのは、分かりやすい授業作りという観点でも重要だと思います。

本来聴覚障がいのある人への合理的配慮であった字幕が、今年度のオンデマンド授業の開始によってユニバーサルデザインという視点からも捉えることができるという新たな発見がありました。

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