高齢者施設特化型モジュラー車いす開発

事業名

高齢者施設特化型モジュラー車いす開発

事業概要

車いすをはじめとした福祉用具は、身体・環境への適合支援が重要であり、不適切な用具の使用は、二次障害への直接的な要因となる。我々の過去の調査結果によれば、特別養護老人ホーム(以下、特養)利用者の8割以上が車いすを日常生活の中心の場として利用していた。

しかしその一方で、特養の全ての車いす利用者が、身体寸法に合わない車いすを使用していた。特養入所者が身体に合わない車いすを使用している原因には、複数原因が考えられるが、中でも国内車いす規格の多くは成人男性を基準としたものであり、高齢者の身体寸法・機能および使用方法・環境を考慮されたものではない点が挙げられる。

また、入所期間の長期化及び重度化が進行する特養においては、高齢者の身体状況の変化に応じた調整が随時可能なモジュラー型でアジャスタブル機能を備えた車いすが望まれる。しかし、調整可能な製品の多くは、海外仕様で高価でサイズも大きい。我々は、2009年4月から現在までに特養の車いす利用者約20名に対して姿勢保持を含めた車いす適合(身体・生活)支援を実施してきた。その中で、国外車いすを含めた現状の車いすでは、大きさや調整範囲等の問題から高齢者に望ましい適合状況を作り上げるには限界があることが明らかとなった。

また、特養内で車いす適合支援を行う上で、利用者の生活の最前線にいるケアワーカーが車いすや姿勢保持に関心を持ち、随時、調整が行える技術と環境の提供が必要であることが明らかとなった。そこで本事業では、特養で用いることを前提とした新たなモジュラー・アジャスタブル機能付き車いすの在り方について検討・開発することを目的とする。

本事業は、入所者総数150名の大規模特養を臨床拠点とし、その他関連施設との連携により実施される現場の実態に基づいた開発事業である。本事業で開発を目指す車いすは、わが国の高齢者の身体寸法及び使用環境を考慮したものであり、高齢者の身体機能の変化に対応可能なモジュラー・アジャスタブル機能を有している。

更に、使用環境を高齢者福祉施設に限定することにより、必要な機能を絞り込み、低価格及び信頼性と保全性の向上を図る。国内利用予測総数70万人とその普及と効果が大いに期待できる。

また、本事業で開発した高齢者施設特化型車いすを用い、ケアワーカー対象の車いす適合支援実践教育プログラムの実施を通して、高齢者福祉施設での正しい車いすの使用・調整方法を啓蒙する。

連携団体

  • 主幹団体:株式会社ジェー・シー・アイ
  • 協力団体:東北福祉大学、社会福祉法人東北福祉会

開発の概要

開発の背景

2010年9月の総務省調査結果によれば、わが国の高齢化率は23.1%(2,944万人)と既に超高齢社会へと突入している。高齢に伴う身体機能の低下により、介護を必要とする高齢者の数は年々増加しており、2008年度高齢社会白書によれば、介護保険利用者総数は425,1万人と推定される。内22.8%は、特別養護老人ホーム(以下、特養)をはじめとした高齢者福祉施設サービスを利用しており、介護度が高くなるに従いその割合は高く、要介護5では約6割が施設利用を占めている。こうした現状の中,増え続ける施設利用者への介護予防、自立支援、更には介護者の負担軽減を目的とした福祉用具の活用が大いに期待される。中でも施設利用者の多くは、車いすを日常の移動手段または、生活を営む場としている。車いすをはじめとした福祉用具は、身体・環境などへの適合支援が重要であり、不適切な用具の使用は、二次障害への直接的な要因となる。過去の調査(関川伸哉:高齢者福祉施設における車いすの適合および高齢者の身体寸法に関する調査研究、PO会誌、Vol.16、No.4、215-220、2009)によれば、特養利用者の8割以上が車いすを日常生活の中心の場として利用していた(平均8時間以上の使用)。

しかしその一方で、特養の全ての車いす利用者が、身体寸法に合わない車いすを使用していた。特養入所者が身体に合わない車いすを利用している原因には、介護保険制度や施設内事情など複数要因が考えられる。中でも国内車いす規格の多くは成人男性を基準としたものであり、高齢者の身体寸法・機能および使用方法・環境を考慮されたものではない点が挙げられる。

また、介護スタッフへの車いす適合手法および効果に関する適切な情報提供不足が考えられる。

開発の必要性・目的

現在、特養をはじめとした高齢者福祉施設で使用されている車いすの多くは、今から60年以上前に海外から輸入された「移動車」であり、病院などで一時的な搬送を目的に使用するものである。そのため長時間の使用に適しておらず、姿勢の崩れや褥そう等の二次障害を生み出す原因となっている。更には、現状の車いす規格の多くが、小柄な高齢者の身体寸法に適合していない。

また、入所期間の長期化及び重度化が進行する特養においては、高齢者の身体状況の変化に応じた調整が随時可能なモジュラー型でアジャスタブル機能を備えた車いすが望まれる。

しかし、調整可能な製品の多くは、海外仕様で高価でありサイズも大きい。

我々は、2009年4月から現在までに特養の車いす利用者約20名に対して姿勢保持を含めた車いす適合(身体・生活)支援を実施してきた(関川伸哉:特別養護老人ホームにおける車いすの現状と導入事例紹介、福祉介護機器テクノプラス、Vol.3、No.6、51-55、2010)。その中で、国外車いすを含めた現状の車いすでは、大きさや調整範囲等の問題から高齢者に望ましい適合状況を作りあげるには限界があることが明らかとなった。

また、特養内での車いす適合支援を行う上で、利用者の生活の最前線にいるケアワーカーが車いすや姿勢保持に関心を持ち、随時、調整が行える技術と環境の提供が不可欠である。

そこで本事業では、特養で用いることを前提とした新たなモジュラー型・アジャスタブル機能付き車いすの在り方について検討・開発することを目的とする。また、本事業で開発した車いすを用い、特養ケアワーカーを対象とした車いす適合支援実践教育プログラムの実施を試みる。

開発の特色・独創的な点

本事業は、入所者総数150名の大規模特養を拠点とし、その他関連施設との連携により実施される現場の実態に基づいた臨床研究開発事業である。本事業で開発を目指す車いすは、わが国の高齢者の身体寸法及び使用環境を考慮したものであり、高齢者の身体機能の変化に対応可能なモジュラー型・アジャスタブル機能を有している。

更に、使用環境を高齢者福祉施設に限定することにより、必要な機能を絞り込み低価格及び信頼性と保全性の向上をはかる。国内利用予測総数70万人とその普及と効果が大いに期待できる。

また、本事業で開発した高齢者施設特化型車いすを用い、ケアワーカー対象の車いす適合支援実践教育プログラムの実施を通して、高齢者福祉施設での車いすの正しい使用・調整方法を啓蒙する点に他の事業とは異なる独創的な点があると考える。

開発方法、動作原理等

現在までに特養の車いす利用者約100名を対象に高齢者の身体寸法計測及び利用者の身体機能に関する情報収集を実施した。開発に向けて、東北福祉会関連施設入所者を対象に300名規模の身体寸法計測及び利用者に関する情報収集を実施する。計測値及び利用者情報をもとに機能仕様書にまとめプロトタイプの高齢者施設特化型車いすの開発を行う。

現在までに約20名を対象に実施してきた車いす適合支援事業に基づき予測される機能は以下の通りである。但し、本事業で開発する高齢者施設特化型車いすは、リクライニング機能等を有する重度利用者を想定した多機能型車いすとは異なり、自立支援を目的としたものとする。

開発は、車いす本体、座板(ベース)、クッションの3点とし以下に挙げる機能が含まれる。

  1. 個々の利用者の身体機能・仕様目的に応じて選択可能なモジュラー機能
  2. 身体状況の変化に対応可能なアジャスタブル機能
  3. 長時間の座位に対応可能な姿勢保持機能
  4. 少ない残存能力で駆動可能なパッシブな駆動機能。残存能力維持・向上のための立位支援機能
  5. 失禁時の衛生管理保持機能

以上の機能を網羅するための仕様概要を以下に示す。

車いす本体

計測値を基に平均値±2標準偏差に対応可能な座幅を含めた調整範囲を設定する。

折りたたみの機能は用いずに、最少部品点数で剛性を高める。座位保持の視点から、座・背・ティルト角、背張り調整機能を付加する。駆動輪は18インチ以下の設定も検討する。エレベーティングやヘッドサポート等の付加機能は、必要に応じて選択可能とする。

座板(ベース)

スリングシートは使用せずに直接車いす上にベースを設置する。FRP樹脂等の薄くて強度の高い材料を用いる。ベースは三次元構造としてベース本体に骨盤の後傾を抑えるアンカーサポート機能を付加する。本ベースは、失禁時においても簡単に洗浄可能な耐水加工とする。

クッション

姿勢保持重視型と耐圧分散性重視型の2種類とし使用目的に応じて使い分ける。いずれのクッションも失禁時の衛生管理保持機能上、耐水または洗浄可能な素材を用いる。ベース自体にアンカーサポート機能が付加されているためクッションは5cm以内の薄く低価格のものを開発する。

期待される効果

本事業で開発を目指す車いすは、高齢者福祉施設利用者に適した姿勢保持機能を有した新たなモジュラー型・アジャスタブル機能付き車いすであり、国内利用予測総数70万人とその普及と効果が大いに期待できる。

また、ケアワーカー対象の車いす適合支援実践教育プログラムの実施を通して、ケアワーカーの専門性(個々の利用者の身体特性を考慮した自立・生活支援)およびに高齢者福祉施設のサービスの質的向上(利用者の安全保持と活動・参加の機会の拡充)が期待できる。高齢者施設特化型車いすの導入により、施設利用者に対して身体・生活に適合した車いす導入のためのシステムが構築される。そのことにより、利用者の姿勢保持(仙骨座りによる褥そうの防止、体幹変形の予防、食事を含めた上肢動作の確保)、移動手段(本人の残存能力の活用・自立)の確保など身体機能の維持向上および介護職の安全確保(移動動作時の腰部負担の軽減:腰痛問題の解消)に繋がる取り組みが実施される。

将来的には、使用環境及び使用対象者を更に限定することで、安価で機能的な高齢者施設特化型車いすの開発が期待できる。

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