2019/09/24 医療経営管理学科

【職業紹介】診療情報管理士の一日

診療情報管理士は、その専門性から幅広い仕事を担当しています。そのため勤めている病院によって担当の業務が異なるケースが多く、また毎日の決まった業務以外に医師や他部署から統計資料の作成を依頼されるなど、仕事の内容も多岐にわたります。
そのため「診療情報管理士の1日」はどのようなものか、イメージしにくいかもしれません。そこで医療経営管理学科の卒業生3人から、担当している仕事について教えていただきました。

日本診療情報管理学会の『診療情報管理士業務指針2018』

日本診療情報管理学会の『診療情報管理士業務指針2018』から、診療情報管理士の業務を概観すると、「診療情報管理業務の基本的な考え方」では、次の6つの項目に十分注意を払う必要があるとされています。

1)患者中心の医療の実現と質の高い安心・安全な医療の保証
2)チーム医療の促進と情報共有の徹底
3)個人情報の保護とセキュリティの確保
4)「説明と同意」に関する文章、および「入院診療計画書」等の点検と整備
5)診療情報の「コード化」の進展への対応
6)診療情報の活用範囲の拡大と大規模データベースの構築

また、診療情報管理士の業務については、次の大きく6つの業務が示されています。

1)診療情報を体系的・一元的に管理する業務
2)診療情報を安全に保存・管理する業務
3)診療情報を点検・管理する業務
4)個人情報としての診療情報を保護する業務
5)病院の管理・運営のための業務
6)診療情報の活用に向けたデータ処理・提供業務

これらを参考に、診療情報管理士として働いている卒業生の1日について見ていきましょう。

穴澤詩織さん(2017年卒)の場合

退院に関わる業務、入院に関わる業務が主です。退院では「コーディングのチェック」、「概算」、入院では「ファーストコーディング」を行っています。穴澤さんの場合は、その他に「整形外科」「皮膚科」の退院会計業務伝票入力の仕事も担当しています。
また、毎日の決まった業務の他に、「クリニカルパス作成」「DPCデータ作成」「レセプト点検」などの業務も随時行います。
穴澤さんの一日
表中の「概算」とは、退院前日に、入院費のおおよその金額を概算し患者に渡すこと。その際に、①請求漏れがないか ②DPCコーディングが適切か  点検する。②は診療情報管理士が行っている。

花島早織さん(2015年卒)

診療情報管理士の花島さんは、午前中に「退院時サマリー作成」、「入院診療計画書作成状況確認」、「診療録監査」などを行い、午後は「院内がん登録」業務を行っています。
ただし、随時「個人情報開示・外部提供業務」や「統計用務」が入ってきます。

花島さんの一日

鈴木駿太さん(2014年卒)

鈴木さんは、午前中に「入院計画書、退院サマリーなどのチェック業務(記載チェック)」、「カルテの量的点検」、「退院時病名チェック」、病名の変更時の「変更病名チェック」を行います。午後には「院内がん登録」「NDC登録」「退院カルテ管理」などの業務を行います。
またその他に「カルテ開示対応」、「統計作成」、「委員会業務」などの仕事も行います。
鈴木さんの一日
診療情報管理士は鈴木さんとその上司の方の二人体制 同じ部門にはパート1名(カルテ・資料整理)、アルバイト1名(近年は医療経営管理学科の学生) 病棟会計者と同じ部署内で業務を行う。

それぞれの業務の重要性について

上の表から診療情報管理士がいろいろな仕事をしていることがわかります。これらの仕事は『診療情報管理士業務指針2018(以下「業務指針」と呼びます)』では、どのように触れられているのか、簡単に見ていきましょう。

まず診療情報管理士が管理する「診療情報」については「診療情報は所定の様式と手順で記録し、患者ごとに体系的に集約するとともに、看護・薬剤・検査等の各部門から発生する診療情報、あるいは複数の診療科を受診して発生した他科の診療情報も一元的に参照できるような診療記録とする」とあります。カルテを始めとした複数の情報源からの情報を記録したものを指しています。

上述の業務の中に登場するコーディングのチェックは、「業務指針」の「診療情報を点検・管理する業務」にあたります。
「点検・管理」については「入院医療においては、所定の様式で必要な診療情報が記録され、定められた順序で整えられているかについて、診療情報管理士が退院時に確認することは、量的点検として定着した業務となっている」と説明されています。

「コーディング」については、「業務指針」の「診療情報の『コード化』の進展への対応」という項目で「診療情報管理士にとって、診療情報を『コード化』し、対象となる患者や集団についての情報を収集・分析・加工をすることは、専門職としての基本的業務である」と説明されています。

「クリニカルパス(クリティカルパス)作成」についても、「医療を提供するにあたって(中略)、クリティカルパス等を含む『入院診療計画書』の整備は、患者中心の医療を実践する上での基本的な手順である」とされています。

「退院サマリー(要約)作成」については、「各診療科共通の様式による退院時要約情報は、入院医療の評価・分析に必要である。診療情報管理士は、退院時要約の迅速な完成を支援し、その情報に基づいた病院の管理・運営に関する基本的な統計分析を行う」と説明されています。

「入院診療計画書の作成状況確認」については、「診療情報管理士は、量的点検業務等によって完成状況を把握し、迅速な完成を促進・支援する必要がある」とされています。

「がん登録」については、「近年、がん登録制度、医療機能情報提供制度、病床機能報告制度等の、診療情報関連の提供制度が相次いで運用され始めている(中略)診療情報管理士の役割が期待されている」と説明されています。

「個人情報開示」については「患者自身の診療情報についての開示請求に対応する業務とその方法」として解説されています。

「統計業務」については、「退院サマリー作成」に関わる解説箇所でも触れられていますが、「業務指針」の「診療情報の『コード化』の進展への対応」という箇所でも「診療情報管理士にとって、診療情報を「コード化」し、対象となる患者や集団についての情報を収集・分析・加工をすることは、専門職としての基本的業務である。(中略)医療・介護・保健分野のさまざまな課題を統計的に解析する能力を身に付ける必要がある」とされ、統計業務の重要性が説明されています。

このように、診療情報管理士の仕事は、一つ一つが現代の医療を支える大切な意味を持った仕事なのです。

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