医療経営管理学科学科長の舩渡忠男教授が、新型コロナウイルスに対して社会の中の一人ひとりの「共助」の大切さについて、4月9日NHKラジオ「にっぽん列島夕方ラジオ ゴジだっちゃ!」の中でお話し、また円滑なPCR検査の重要性について、日本遺伝子診療学会理事という専門家の立場から、4月20日には河北新報の「持論時論」で訴えかけました。
新型コロナウイルスの感染が爆発的に広がり、緊急事態宣言が全都道府県に拡大されました。いま、最も必要なのは、PCR法による遺伝子検査での病原体検出の早急かつ円滑な実施です。わが国でもこのPCR検査が、条件付きながら保険適用になりましたが、十分な検査が実施されているとは言えません。同時に新しい病原体であるため、PCR検査の確立と検体の取り扱い、輸送・搬送には特段の注意が必要です。
まず、検査実施場所をどこにするかという問題があります。望ましいのは民間検査センターです。 PCR検査に慣れており、多数の検体を処理できる能力と、必要な熟練した技術を持っているからです。1日に1万件以上の検体を処理することができ、その体制は既に整っていると聞いています。感染が疑われる患者の検体検査を隔離診療できる医療機関から直接、民間検査センターに依頼できる体制を構築することが喫緊の課題です。
テレビでは連日、PCR検査や その他の検査法が話題になってい ます。 PCR検査は陽性か陰性かの2択ではなく、ウイルスが持つ 核酸(RNA) の量を測定するということを理解しておく必要があります。すなわち、ある程度以上の量のRNAが検出されれば陽性とし、それに達しなければ陰性と
します(カットオフという考え)。 白か黒かではありません。他の検査方法で調べるなら、このPCR 検査での確認が必要となります。
重要なのは症状のある患者だけではなく、症状がない人たちも検査対象とすることです。無症状の 濃厚接触者が感染者か否かを明らかにすることです。すなわち、どのくらい感染者が国内にいるのか、感染経路が特定できない「市中感染」の広がりをきちんと把握 することが求められます。
次に問題となるのは、検体の採取と搬送です。確立した診断マニュアル手順に準じるのが最良と思われます。採取は、韓国における厳重な個人防護具を身に着けての作業のように、標準予防策の順守が必要です。検体採取の際には、 検体を取り扱う区域を限定し、徹底した消毒が欠かせません。検体搬送に関しては、容器を3重に梱包し、運送業者にガイドラインを守らせることが求められます。これら採取から遺伝子検出までの検 査体制を早急に確立することが急務です。
PCR検査の最も重要な点は定量性にあります。感染の有無としての陽性あるいは陰性を判定するだけでなく、治療開始前と経過観察期間中の患者のRNAの量が分かるため、治療効果の判定に有用です。治癒の確定診断においてもその効果が十分に発揮されます。
PCR検査について、いろいろな議論を交わすことは必要なことです。 PCR検査の民間検査センターを利用した早急な検査体制の確立が切に望まれます。無症状の感染者を含めた感染者数を把握し、市中感染拡大を防ぐ議論のきっかけになっていくことを大いに期待します。
東北福祉大学教授
日本遺伝子診療学会理事
舩渡忠男
