2023/02/06 総合福祉学研究科 社会福祉学専攻
【寄稿】田上優佳さんが鎌田實氏と対談
特別養護老人ホームいやさか苑(兵庫県姫路市)で施設長を務めながら、本学大学院の博士課程で学ぶ田上優佳さん(総合福祉学研究科 社会福祉学専攻)。中央法規出版『おはよう21』12月号にて、地域医療と被災地支援に取り組む医師・作家の鎌田實氏と対談した田上さんから、掲載にあたり寄稿をいただきました。
掲載の経緯
社会福祉法人播陽灘 特別養護老人ホームいやさか苑は、2010年12月に開設しました。その2年後、地域密着型の当法人の取り組みについて興味を持った知人の紹介で『おはよう21』に掲載していただいたことがありました。それから10年が経過し、どのような深まりがあったかと編集の担当者から連絡があり、以下の当法人の特徴を話したところ今回の機会をいただきました。
法人の特徴
法人理念と周知
理念は「私たちは、『誠意』、『清潔』、『安全』の心を持って行動し、地域の方々の尊厳を支え『ゆとりと笑顔のある暮らし』を実現するため貢献します」としました。この理念の浸透のため、毎月行う研修時に職員らと唱和し、その3つのキーワードの実践事例を紹介して、職員がイメージしながら行動できるよう促しています。「地域の方々」とは、利用者だけでなく、働く職員、ボランティア、まだこの施設を使ったことがない地域の人々も含まれています。
利用者の生活(ユニットケア)
個別ケア実践のため、選択や決定できる環境作りに励んでいます。
①利用者の生活リズムを尊重し、職員の個人の都合だけでないケアの標準化に努めている
②入所時の施設介護計画は、家族にも来苑していただき、利用者の状態変化を『私の姿シート』にまとめ、家族にもわかりやすい内容にして、半年ごとに更新
③24時間暮らしの支援シートを個別に作成して、利用者の生活のリズムを把握し、職員によって違うケアをしないよう工夫
ムーブエイドケアという名をつけた、利用者毎に状態像に適合する移動移乗福祉用具を選定するケアを実践しています。利用者の自立や尊厳の保持のため利用者主体で取り組んでいるため、介護者に負担をかけないよう遠慮する必要がないことや、生活の場(居場所)の広がりが見られます。
①水分摂取は個人の目標量を把握して摂取しているため、脱水や褥瘡などがほとんどない
②最期まで口からの栄養が摂取できるよう、常食・刻み食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食・高カロリー食などを提供
③看取り期の対応は、入所時から半年ごとに本人・家族の意見を伺い、揺れる家族の気持ちに寄り添い、それぞれ本人らしい最期が迎えられるよう支援
④介護職員が医療的ケアを学ぶ環境を作り、胃ろう・ストーマ・酸素療法・膀胱留置カテーテルなどの対応を実施
①利用者の生活リズムを尊重し、職員の個人の都合だけでないケアの標準化に努めている
②入所時の施設介護計画は、家族にも来苑していただき、利用者の状態変化を『私の姿シート』にまとめ、家族にもわかりやすい内容にして、半年ごとに更新
③24時間暮らしの支援シートを個別に作成して、利用者の生活のリズムを把握し、職員によって違うケアをしないよう工夫
ムーブエイドケアという名をつけた、利用者毎に状態像に適合する移動移乗福祉用具を選定するケアを実践しています。利用者の自立や尊厳の保持のため利用者主体で取り組んでいるため、介護者に負担をかけないよう遠慮する必要がないことや、生活の場(居場所)の広がりが見られます。
①水分摂取は個人の目標量を把握して摂取しているため、脱水や褥瘡などがほとんどない
②最期まで口からの栄養が摂取できるよう、常食・刻み食・ソフト食・ミキサー食・ゼリー食・高カロリー食などを提供
③看取り期の対応は、入所時から半年ごとに本人・家族の意見を伺い、揺れる家族の気持ちに寄り添い、それぞれ本人らしい最期が迎えられるよう支援
④介護職員が医療的ケアを学ぶ環境を作り、胃ろう・ストーマ・酸素療法・膀胱留置カテーテルなどの対応を実施
職員の働きやすさ
①有休消化率は、前年度実績85.9%、休日は年間124日
②夜勤は、育児世代などにも勤めやすい8時間勤務(10時間拘束)
③20歳から70歳までの年齢層がバランスよく勤務
④コンプライアンスとケアの質の向上のために毎月、講義と実践の研修を実施
⑤ムーブエイドケアと名付け、利用者の状態像に見合う移動移乗福祉用具を選定するケアを実施。利用者の自立を促し、抱え上げないため、職員の腰痛対策につながっている
⑥ユニットごとにばらばらになりやすい環境整備について5S活動を行い、急な応援者が対応しやすいよう配慮
⑦多職種が連携できるよう、サーバントリーダー型の組織作りを実践。相談しやすい環境を目指し、会議はボトムアップする仕組みを作成
⑧利用者の生活リズムを尊重して作成した24時間暮らしの支援シートを、ユニット全員分のシートにまとめて業務分担表を作成し、働き方を可視化
②夜勤は、育児世代などにも勤めやすい8時間勤務(10時間拘束)
③20歳から70歳までの年齢層がバランスよく勤務
④コンプライアンスとケアの質の向上のために毎月、講義と実践の研修を実施
⑤ムーブエイドケアと名付け、利用者の状態像に見合う移動移乗福祉用具を選定するケアを実施。利用者の自立を促し、抱え上げないため、職員の腰痛対策につながっている
⑥ユニットごとにばらばらになりやすい環境整備について5S活動を行い、急な応援者が対応しやすいよう配慮
⑦多職種が連携できるよう、サーバントリーダー型の組織作りを実践。相談しやすい環境を目指し、会議はボトムアップする仕組みを作成
⑧利用者の生活リズムを尊重して作成した24時間暮らしの支援シートを、ユニット全員分のシートにまとめて業務分担表を作成し、働き方を可視化
ボランティアとの交流
利用者に対して、生活に彩をつけるためクラブ活動(おり紙・書道など)参加の提案をしています。その支援者としてボランティアに参加していただいています。
①地域の方々が普段習ったり教えたりしている太鼓、手品、コーラス、フラダンスなどの発表の場を行事として提供
②コロナ禍前は、年に1回ボランティア交流会と称して、50名ほどが参加。お菓子・飲み物を準備し、それぞれのボランティアの取り組み内容を発表していただき、交流を深めていた
③ボランティアさん自身から、やりがいや生きがいになっているとの声が寄せられている
①地域の方々が普段習ったり教えたりしている太鼓、手品、コーラス、フラダンスなどの発表の場を行事として提供
②コロナ禍前は、年に1回ボランティア交流会と称して、50名ほどが参加。お菓子・飲み物を準備し、それぞれのボランティアの取り組み内容を発表していただき、交流を深めていた
③ボランティアさん自身から、やりがいや生きがいになっているとの声が寄せられている
地域とのかかわり
①コロナ禍にあっても、できるだけ地域の方々の介護予防として姫路市で位置づけされている『いきいき百歳体操』の場を提供
②兵庫県の委託事業である『介護技術講習会』を年6回開催し、地域の方々に介護に関する知識を深めていただいている
③地域運営推進会議を開設から2か月に1回、休むことなく開催。施設情報を提供したり、地域情報をいただいている
④入居に関する相談だけでなく、介護に関する悩みや不安に対応し、誠意ある行動を心がけている
②兵庫県の委託事業である『介護技術講習会』を年6回開催し、地域の方々に介護に関する知識を深めていただいている
③地域運営推進会議を開設から2か月に1回、休むことなく開催。施設情報を提供したり、地域情報をいただいている
④入居に関する相談だけでなく、介護に関する悩みや不安に対応し、誠意ある行動を心がけている
鎌田先生との対談を終えて
対談には当苑施設長、介護主任、ユニットリーダー、管理栄養士がZOOMで参加しました。鎌田氏は、職員が施設の取り組みについてバランスよく話せるようリードして下さり、それぞれの立場からエピソードを話すことができ、和やかなムードで対談できました。
このような機会をいただき、10年を経過した月日の積み重ねを振り返り、これからも更に地域の方々のゆとりと笑顔のある暮らしを目指していこうと実感しました。
このような機会をいただき、10年を経過した月日の積み重ねを振り返り、これからも更に地域の方々のゆとりと笑顔のある暮らしを目指していこうと実感しました。