2023/11/15 医療経営管理学科

【教員インタビュー】太田晴美准教授

2023年に着任された、太田晴美先生のインタビューです。

担当科目を教えてください

太田先生の研究室のデスク
太田先生の研究室のデスク
今年(※2023年)担当しているのは、「医療管理各論Ⅰ」という、主に医療事務系を目指す人たちに向けて、医療の法律や制度などを教える科目です。法律や制度は難しいので、実際に私が臨床で経験した場面と照らし合わせて説明するようにし、イメージが持てるように工夫しています。また、「自分たちが医療を受診する時に制度や法律が関わっている」というように、学生自身の経験と関連付けた授業をやっています。

その他に、救急救命士課程の「シミュレーションⅠ」と、「救急車搭乗実習」。いずれも救急救命士には必要な科目で、病院の救急と災害看護の経験から授業に携わっています。それから同じ健康科学部の、保健看護学科で「災害看護学」、「国際看護論」。そして防災に関する科目の「災害伝承学」と「実践的防災学」を担当しています。

ご専門について教えてください

私の専門は、主に2つの領域があります。医療経営の中でも人的資源管理と、災害時の生命と生活を守るためのネットワークづくりと備災活動です。

通常の医療は、健康と疾病の回復、その人らしい生涯を全うするために行われる活動ですが、その現場には「ひと」が存在します。組織の目的を達成するために、働く人びとの採用から退職(時には退職後まで)、個人と組織に有用な人財として活躍するための取り組みを考えています。

もう一つは、人々の生命を守るために、看護師の人材育成とネットワーク作りに取り組んできました。災害時に一人でも多くの生命を救うために看護師のネットワークを構築し、協力体制を強化しています。

現在、新たな取り組みとして、災害時の避難活動について、多様な背景を持つ人達を含め、取り残されることがないようにしなければいけないと考えています。まずはペットを飼っている人々についてです。ペットと避難するために車中泊等で体調が悪くなることがないように、ペット飼育者の日頃の備え、避難先での健康リスクに対処する方法などを提案し、人とペットの命を守るための仕組みを構築することを目指しています。

経歴について簡単に教えてください

研究室の書架の前で2台のiPadで仕事をする太田先生
研究室の書架の前で2台のiPadで仕事をする太田先生
もともとは看護師として民間の病院で整形外科、小児科、脳神経外科、ICU(集中治療室)、救急救命センターで勤務していました。看護師になって、早い段階で責任ある立場に立たなければならない状況に直面しました。年齢が若く、戸惑いも大きかったのを覚えています。管理者になるためには、まだまだ学ばなければならないと思い、転職しました。

その後、救急救命士課程で教員をしているときに、知り合いの医師から「コソボの難民支援プロジェクトをやるから行ってくれないか」という話をいただき、夏休み期間に1か月の予定で、ユーゴスラビアのコソボ自治州で戦争の復興支援に参加しました。日本を出発するときはまだ、戦争をしていたのですが、移動中に停戦し、難民だった方がコソボに戻り始めていました。私が現地に入ったときは既に医師や看護師が帰ってきていて働く場を探していました。私たちは、通訳をしながら医療を提供するよりも、現地の医療従事者が働けるように支援する方が良いと考え、支援の方法を変えました。結果的に7ヶ月と少し現地で活動していました。

帰国後、海外等での調査活動やJICAパキスタンで健康管理の仕事をしていました。帰国後、あらためて勉強した方がよいと考え、大学院に進学し看護学と経営学を学び、大学教員になりました。

海外経験と大学院への入学についてお聞かせください

海外で多くの人と知り合って、自分の視野はすごく広がったように思います。日本という国や、日本の医療制度、看護の世界を考えるようになり、政治や社会情勢も見るようになりました。それまで、勉強が嫌いだったのですが、“人”の大切さを改めて感じて、病院で責任ある立場になったときのことを思い出し、“人(スタッフ)”に関することを学びたいと北海道医療大学大学院へ進学しました。博士前期課程(修士)では、災害看護に携わる人の動機付けについて研究しました。その研究は、今の研究テーマについてつながってきています。大学教員になってからも少しずつ進化させながら研究しています。コソボの時の経験もあり、災害(有事)の際に活躍できる人を育てるためには、平常時から、働き方と、組織の在り様を考えていく必要を感じて、博士課程では経営学を学びました。

災害医療とのかかわりについてお聞かせください

研究活動を通してできた「北海道災害看護支援コミュニケーション(EZO看)」ネットワークのメンバーポロシャツ
研究活動を通してできた「北海道災害看護支援コミュニケーション(EZO看)」ネットワークのメンバーポロシャツ
私は小学生の時に宮城県沖地震を経験していたこともあり、災害に関する思いが心のどこかにあったのかもしれません。阪神淡路大震災が発生したときに、病院から支援を出すことになり、まず自分が先陣で行きたいという思いがありました。しかし、当時のICUでは勤務移動があったばかりで、自分が現地に行くと、ICUのスタッフ配置に影響し、患者様へのケア提供に問題があると考え、別のスタッフを派遣しました。その経験から、災害支援に行くことだけが支援ではなく、離れたところで自分の施設・職場を守ることもとても大切だと理解しました。そして、災害時にはスタッフマネジメントが重要であること、それが支援と受援の双方において必要であることを認識しました。

それと同時に、日頃の看護や医療活動をどのように実践しているか。平常時にコミュニケーションが上手に取れないようなことがある、あるいは、報告連絡相談ができていない場合があるなど、もしそういうことがあれば、災害時だけやれるわけがないので、やはり平常時の医療活動が基盤になると考えるようになりました。現在は、それが発展して、被災前の備え(備災)活動、人々の生命と生活を守るための取り組みに発展してきています。

学生へのメッセージ

何よりも大切なことは、人との出会いをどれだけ大事にするかです。単に出会っているときではなく、例えば高校や大学の友人でしたら、卒業してからも連絡を取り合ったりすることです。それが、私もそうですけど、自分が困ったときの助けになったり、時には新たなチャンスをいただくことにつながったりします。日頃の挨拶や時折の連絡などを怠ることなく、常につながっておくことが大事だと思います。

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