2026/02/24 社会福祉学科

【報告】「ソーシャルワーク演習(専門)Ⅲ」フィールドワーク報告会を開催

2026(令和8)年2月10日、本学にて「ソーシャルワーク演習(専門)Ⅲ」の最終成果報告会を開催しました。本演習は、個人の生活課題から地域社会の構造まで、包括的な支援の仕組みを実践的に理解することを目的としています。

報告の様子
報告の様子
■ 演習の出発点——「見えなくなっている困難」に気づく
本演習の初回では、2005年にアメリカ南部を襲ったハリケーン・カトリーナの事例を取り上げました。この災害で最も深刻な被害を受けたのは、日頃から社会の中で周縁に置かれていた人々でした。災害の規模そのものだけでなく、ふだんの生活の中で支援の届かない状態に置かれていた人々が、いざというときにさらに厳しい状況に追い込まれるという構造が明らかになった事例です。
こうした構造を捉えるために「出会い損ない」や「抹消」という概念を紹介しました。「出会い損ない」とは、支援の仕組みと当事者の困難とがかみ合わず、そもそも支援の接点が生まれないことを指します。「抹消」とは、ある人々の困難が既存の分類のどこにもあてはまらないために、問題として認識すらされなくなることを意味します。
学生たちはこの視点を手がかりに、「こども・子育て」「障害者」「若者」「高齢者」の4つのグループに分かれ、大学近郊の貝ケ森地区でフィールドワークを行いました。

■ 報告会——学生たちが見つけたもの
報告会には、調査に協力いただいた町内会長や社会福祉協議会の方々、子育て中の保護者の皆様にお越しいただきました。各グループが地域アセスメントの結果をもとに、地域に見えにくくなっている課題と、その解決に向けた提案を発表しました。
こども・子育て支援グループは、「わざわざ足を運ぶ場所」ではなく、買い物や通園といった日常の動線の中に自然と交流が生まれる仕組みを提案しました。支援を受けるために特別な行動をとらなくても、ふだんの暮らしの中で人とつながれることの大切さを指摘しています。
若者支援グループは、地域に住む若者が「単なる居住者」にとどまっている現状に着目しました。若者が地域の中で役割を持てる場や機会をつくることで、存在が見えにくくなることを防げるのではないかと提案しています。
高齢者支援グループは、貝ケ森地区で行われている防災訓練が、すでに住民同士のつながりをつくる場として機能している点に着目しました。こうした既存の活動を、新たな関係づくりの土台として活かせる可能性を提示しています。
障害者支援グループは、障害のある人が「支援を受ける側」としてのみ位置づけられる地域のあり方を問い直しました。当事者が参加し、多様な人の存在があらかじめ想定された地域づくりの必要性を訴えています。
これらの課題は貝ケ森地区に限ったものではなく、日本のあらゆる地域で起こりうるものです。学生たちは、地域アセスメントを通じて、ふだん見過ごされがちな困難に光を当てようと試みました。

「ご清聴ありがとうございました」
「ご清聴ありがとうございました」
 ■ 地域の方々からのフィードバック
発表後のディスカッションでは、地域の皆様から率直で温かいフィードバックをいただきました。
限られた授業期間の中で、課題の発見から具体的な実践の展開やその検証にまで至ることは容易ではありません。しかし、その「限界」を体験し、支援が届かない現実に向き合うこと自体が、対人援助の専門職を目指すうえでの重要な学びになります。学生たちにとって、大学の演習室では得られない、地域の現場でしか経験できない学びの機会となりました。


■ 担当教員より
今回のフィールドワークでは、同じ貝ケ森という地域であっても、「誰の立場から見るか」によってまったく異なる課題が浮かび上がってきました。
カトリーナの事例が示すように、ふだんの生活の中で見過ごされている困難を捉えられるかどうかは、いざというときの対応に直結します。学生たちが提案した「日常の動線を活かした交流」や「若者が役割を持てる場」は、地域の皆様にとっても新鮮な視点だったようです。
授業の時間的制約から、提案を実践に移すところまでは至りませんでしたが、フィールドワークの中で学生たちが感じた「現場の違和感」は、生活世界へのフィールドワークを経たからこそのものです。この経験を、将来のソーシャルワーク実践につなげてほしいと考えています。
最後になりますが、調査にご協力いただいた皆様、そして学生たちを温かく迎えてくださった地域の皆様に、心より感謝申し上げます。
(文責:清水冬樹)

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