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総合福祉学部福祉心理学科

養護教諭をめざすあなたへ

福祉心理学科における養護教諭養成の特色

養護教諭になるために

養護教諭になるためには、「養護」「教育」「看護」に関する授業で学んだことを踏まえ、看護学臨床実習や学校での養護実習に主体的に取り組み、知識と実践を融合させて学びを深めていきます。これはどこの養護教諭養成大学でも共通していることです。

本学の特徴は、福祉心理学科で多種多様な心理学を学びながら、養護教諭になるための学びも積み重ねていける点です。養護教諭は、けがや病気の手当て、健康診断、健康相談、学校の環境衛生、保健教育、感染症の予防などを通して、子どもたちを「守り」「育てる」教育職です。一方で、教室に入れない子どもを支援したり、悩みを聴いたりすることもあります。福祉心理学科で学んだことは、子どもたちの心の成長を支える上で強みとなり活かされることでしょう。

養護教諭を目指す学生に聞きました

本学科での学びの良いところ

本学科における学びの強みやいいところについて、養護教諭を目指している学生に聞いてみました。

 学んだ幅広い心理学が子どものメンタルヘルスの支援に役立つ
 自分を客観視できるようになり、支援者・教育者としてのメンタルが強くなる
 自己理解が深まり、これから生きていく上で、自己コントロールがしやすくなる
 グループワークや発表の機会が多いので、苦手だった発表に少し自信がもてるようになった
 公認心理師など他の資格を目指している学生とつながることができ、将来の多職種連携に役立つ
 先輩との交流の機会があり、実習や教員採用試験の話ができる
 2年生から養護ゼミ(養護教諭を目指す人たちのゼミ)で養護教諭の専門的なことが学べる
 養成に関わる3人の教員が、教育・看護・心理の職業経験と専門性を活かして指導するので、それぞれの分野について深く学べるし、相互のつながりを含めて幅広く学ぶことができる

なるほど、養護教諭の仕事のためだけではなく、自分が生きていく上でも役立つということですね。
ところで、養成に携わる教員たちの、職業経験と専門性を活かした授業とはどんな授業でしょう?
 

こんな授業やってます!

教員の専門性や大学の特色を生かした授業

学校の真ん中に子どものいのちと健康を置くために ー東日本大震災ご遺族の語りに学ぶー(鎌田准教授 / 元小学校教員)

1年生後期の「養護概説」では、東日本大震災の際、幼稚園バスに乗っていて短い生涯を閉じた愛梨さん、春音さんのご家族から、「学校の真ん中に子どものいのちと健康を置くこと」の大切さについての語りにふれています。「語りにふれる」とは、語られる内容だけでなく、ご家族のみなさんの息づかい、瞳の奥に感じられる複雑な心境、これからを生きる子どもたちの幸せを願う温かく、切ない思いにふれることを大切にしています。あのとき、いのちを閉じた子どもたちの夢や優しさ、健気さにふれ、日ごろから子どもたちのいのちを愛でることの大切さを感じ、子どもの成長・発達に寄り添う養護教諭のしごとの尊さを考えていきます。

2022年度は、春音さんのお姉さんの楓音さんに、紙芝居「忘れないよ 小さな命とあの日のこと」を披露していただきました。同年代の楓音さんの読み聞かせに心動かされる時間となりました。学校の真ん中に置くべきは、子どもたちのいのちと健康。この思いを胸に、これからの養護教諭としての学びを深めていく大切な機会となっています。

*事前にお知らせをし、震災等についてふれることに不安を感じる方は無理をさせず、別途対応をしています。 

関連施設の特色を活かした看護学臨床実習(飯嶋講師 / 元看護師長)

3年次に、複数名のグループを編成し、医療・介護施設にて計10日間の実習を行います。看護学臨床実習は、医療・介護現場の実際を見学・体験することによって、療養者の生活や心身の状態を理解するとともに、医療チームを構成する各専門職者の役割や機能、連携等を学ぶ体験学習となります。

実習施設の一つに、東北福祉大学の関連施設であるせんだんホスピタルがあります。せんだんホスピタルの児童思春期病棟で実習を行い、心身の不調を抱える子どもたちへの支援について学びます。看護師、公認心理師、精神保健福祉士など、各専門職者がどのように子どもたちに接し支援しているのか、実際の関わり場面を見学すると共に、病棟やデイルームでのレクリエーション、作業療法の場に一緒に参加しています。同じ時間を過ごすことで、相手の想いに寄り添う姿勢や、傾聴、受容的態度について学んでいます。これらの学びは、養護教諭として心に問題を抱えている児童生徒へどのように寄り添い関わっていくべきかを考える際の大きな糧となっています。実習終了後にはグループごとに実習報告書を作成し、実習報告会で発表します。それぞれがどのような実習であったのか、学びの共有を図ると共に、実習の成果や意義の振り返りを行います。看護学臨床実習は、保健室の環境づくりや救急処置、心の支援について考える貴重な学びの機会となっています。
 

養護実習を振り返る ー心理学を活かした事例検討会を通してー(内藤教授 / 元養護教諭・現臨床心理士)

4年次の後期に行われる「教職実践演習」の中で、PCAGIP※という方法を用いて、実習中に悩んだり困ったりしたことを題材とした事例検討会を行っています。PCAGIPは、“カウンセリングの父”といわれるカール・ロジャースの人間観を援用したグループアプローチと、一問一答形式で問題や解決に近づいていくインシデントプロセスを組み合わせた事例検討法です。グループメンバーは質問だけで主役である事例提供者にコミットし、意見やアドバイス、批判はしません。そこから安心できる空間や一体感が生まれ、事例提供者が何らかのヒントや気づきが得られることをねらいとしています。また、質問はしないけれど周りで関心を寄せて頷きながら参加しているメンバーもいるので、徐々に、安心できる器の中にいるような気持ちになり、内容が深まっていきます。ちなみに、この方法では、一問一答形式で進めていくメンバーを「金魚」、周りで観察的に参加しているメンバーを「金魚鉢」と呼んでいます。実際の金魚は水をたたえた金魚鉢によって生かされていますから、この方法の「金魚鉢」もなくてはならない存在のように思えます。さらに、メンバーは自分の実習経験と重ね合わせながら参加しているので、自身の実習を振り返ることができ、体験学習の学びが深まる機会にもなっています。

【学生の感想】
・自分の事例についてみんなで真剣に考えてくれていることを感じとれたので、緊張感が安心感に変わっていった。
・質問だけの関わりだからこそ、事例提供者が自らヒントや答えを見つけることができるのだなと感じた。
※ 村山正治・中田行重編 (2012) 新しい事例検討法PCAGIP入門 -パーソン・センタード・アプローチの視点から 創元社
 

こんな取組み続けています!  -縦のつながり、そして研究を紡ぐ-

OB・OG養護教諭の講義

学生の心に響く卒業生の言葉

養護教諭養成課程では、4年次後期の「教職実践演習」において、卒業生の養護教諭の先生から講義を受ける機会があります。準備・進行は4年ゼミ生が担当し、後輩にも参加を呼びかけ、事前に先生への質問などを集めます。これまでには、聴覚支援学校に勤務する先生の手話をまじえた講話もありました。2022年度は、小・中・高校で9年のキャリアを積んだ先生の講義でした。身近な存在である卒業生の先生の言葉は、学生の心にやさしく響いたようです。

【4年生の感想】
「”養護とは何か”を考える授業に参加し、先生の考える養護とは、受けとめ、寄り添うこと、というのがすごく胸に刺さりました。 また、(正規採用ではない)講師をしている際に一度も養護教諭以外の道を考えたことがなかった、というお話しを聞き、私も夢に向かって頑張っていきたいと思いました。」

【1~3年生の感想】
「養護教諭はとても狭き門なので、自分が実際に養護教諭になることができるか心配な面が大きかったのですが、先生のお話を聞いてやはり養護教諭になりたいという気持ちを持ち続けることが何より大切であることを感じました。」
 

縦割りの活動

学年を超えた交流から生まれる学び

養護教諭養成課程では、毎年、養護実習を終えた4年生とこれから実習に臨む3年生の合同講義を開講しています。講義には、1年生と2年生の参加希望者も加わり、縦割りの交流会を行っています。

2022年度は、4年生40人が企画・進行を行い、1~3年生の45人が参加しました。4年生は、養護実習の報告や事前に集めた質問への回答を行いました。また、グループに分かれ、実習や採用試験の対策、進路のことなどの質問に丁寧に答えていました。学年を超えた交流の機会は、下級生だけではなく4年生にとっても学びの多い機会になっているようです。

【下級生の感想】
「養護実習について、「はじめはできないことでも最後の週にはできるようになることもある」との言葉を聞いて,臆せず挑戦していこうという気持ちになりました。」

【4年生の感想】
「自分自身の経験を話すことで、これまでの経験の整理ができたり、自分の考えにあらためて気付いたりすることができた。」
 

学びの集大成『養護』

養護と心理学の学びを活かした卒業研究

養護教諭養成の4年ゼミでは、全員が卒業研究に取り組み、グループや個人で研究論文をまとめます。研究グループを作る前には、学会のポスター発表のような方法で、個人の研究計画について質疑応答をしながら全員で共有します。

これまでの卒業研究のテーマの一部をキーワードで紹介すると、「養護」「保健室」「不登校」「災害」「性教育」「いのちの教育」「LGBTQ」「児童虐待」「発達障害」「新型コロナウイルス」「アレルギー」「睡眠」「食」「SNS」「親子」「反抗期」「自尊感情」など多岐にわたっています。研究の方法は、文献から事例を集めたり、アンケート調査やインタビューからデータを集めたりする方法や、教材を作成して効果を検証する方法など、目的に合わせた方法を選びます。分析については、心理学研究法で学んだ質的データの分析や、心理統計ソフトによる量的データの分析にもチャレンジし、目的、仮説、調査、分析・検証、考察がつながっていく過程を学んでいます。教員もいっしょに頭をひねりながら取り組んでいるので、論文集『養護』を手にした学生と共に味わう達成感はひとしおです。