担当教員● | 雪江 美久 |
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私たちの生活の有り様は戦前・戦後を通じて、近代化の流れのなかで大きく、しかも急速にその姿を変えてきた。戦後期(昭和20《1945》年以降)を見ても、特に高度経済成長期を境にして見られた国民生活再編の動きはすさまじいものであったといわれている。加えてここ数年来、かつての産業革命以上に社会的影響をもたらすといわれている、いわゆる「IT革命」の動きが、これまでの生活の有り様をさらに根底から、変革していくかのような動きを見せている。
このような動きは私たちの生活に一面では限りない便利さと豊かさをもたらしている反面、一方でさまざまな問題をつくりだし、人類規模、地球規模での問題解決への取り組みが求められていることは周知の通りである。
このような状況にあって、当面する教育や社会福祉の問題に取り組んでいこうとするとき、人々の生活の有り様がどのように変化し、問題がその変化とどのように関連して生起しているのかを的確に把握しながら、問題解決への方途を探っていくことは必要不可欠なことである。
社会の変化が急速であればあるほど、それまでの生活・文化様式との軋轢はつよく、問題発生の要因をつくりだしがちであり、その要因を除去したり、新しい動きに適切に対応する条件を整備していくことが求められる。ここで改めて、人々の生活実態を的確に把握し、問題が生起する背景を分析するとともに問題解決のための「理論と方法」が必要となっており、この点に関する力量をいかに身につけていくかは関係する領域の専門家にとっては、きわめて重要なことである。
「生活研究の理論と方法」については別に開講している「生活構造研究」主として文献資料を中心に理論に関する学習を行なう予定であるが、「本演習」では、「生活構造研究」と関連させて、より実際に即した学習を行なうことをねらいとしている。たとえば課題について統計資料や実際のフィールド・ワークを通じて受講生自らが各種の資料を収集したり、インタヴューを通じて情報を集め、分析作業を通じてレポートをまとめることなどを考えている。
ところで、「本演習」のテーマを「国民生活の再編過程に関する社会学的考察──特に地域社会における社会・生活組織(システム)の問題を中心に──」としたのは、前述したところであるが、戦後のわが国の社会変化はまことに急激であったが、とりわけ高度経済成長期を境に示された社会・生活変動は注目されるものであった。旧秩序の崩壊過程と新秩序の形成過程で見られた、さまざまな葛藤や問題の発生は以後のわが国の社会の発展のあり方や人々の生活の有り様に大きな影響を与えることとなった。まさにこの時期は歴史的にも注目したい「国民生活再編の時期」であったといっても決して過言ではない。時代はまた新しく「IT革命の時代」を迎え、新しい変革の時期を迎えつつある。
そこでこの時期に、「本演習」で、きわめて限られた条件のもとではあるが、改めてこの「国民生活再編の時期」にスポットをあて、日本人の生活・社会のあり方の変容過程を点検し、時代の動きのなかで“新しく手にしたもの”、逆に“失ってきたもの”をとらえ直してみることにする。この作業を通じて歴史の動きのなかから、これからの「生活・社会づくり」に向けて、なにがしかの示唆を得るための学習をすすめる。受講生の積極的な活動を期待したい。なお、「健康長寿」に関する研究成果についても取り上げたい。
4月開講後、受講生が確認された段階で、改めて「本演習」のスケジュール表を受講生に配布する。そこでおおよその年間学習計画を示し、それにしたがって「本演習」をすすめる。
なお、「レポート作成」および「本演習」に関する質問・応答などは原則として郵送かFAXによるが、電子メールでも可。
ここでは概要のみを記しておくことにする。受講生には、後日、より詳しく「本演習」のすすめ方、たとえば調査および内容、方法などについて資料を添えて説明・指導する予定である。
「本演習」は、最終的に提出する「最終レポート」と、学期中に提出を求める複数の「課題レポート」及び、指導過程の実績、スクーリングの結果(「スクーリング事前課題」を含む)などを総合して行なう。
「スクーリング」の期間、およびもち方が現在不確定部分があるので、決まりしだい最終的な課題を連絡するが、現時点においては、上記「スクーリング事前課題」については、開講後、改めて受講生に対して指導教員より連絡する「学習指導」により、学習を開始し、この学習内容との関連で、下記の点に関することを「事前課題」とする予定である。
本授業は「演習」であるので、「最終レポート」作成過程で随時指導していくので、ここでは概略のみを記す。
枚 数: |
個別指導のなかで決める。 |
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テーマ: |
各自選択したテーマとする。 |
内 容: |
各自選択したテーマによる。 |
各自が担当教員指導のもとですすめる学習・研究成果をまとめることになる。
(赤字=大学から送付される必読図書)
なお、以上の他に、「本演習」に関する参考文献については必要に応じて紹介する。