日時:2026年10月24日(土)14:00~16:30
会場:東北福祉大学仙台駅東口キャンバス2階
主催:文化庁
受託・制作:一般社団法人琉球フィルハーモニック
共催:宮城県、東北福祉大学
障害のある方もない方も、みんなで共に音楽を楽しもう!
一般社団法人琉球フィルハーモニックは、文化庁「障害者等による文化芸術活動推進事業」の委託を受け、2019年より「ゆいまーるミュージックプロジェクト」を推進しています。本プロジェクトでは、障害のある当事者をはじめ、福祉・医療・教育分野の専門家、文化芸術関係者が協働する体制のもと、「合理的配慮」を軸とした文化芸術活動を実践してきました。その取り組みの一環として、誰もが音楽を楽しめる共生型オーケストラ公演「美(ちゅ)らサウンズコンサート」を継続的に開催しています。2026年は、琉球フィルと東北の演奏家が合同でオーケストラを編成し、10月25日(日)に宮城県庁において、東北で初めてとなる公演を開催しました。今回は音楽公演に加え、「合理的配慮」をテーマとした基調講演とトークセッションも実施しました。教育・福祉分野や文化施設の運営に携わる方々など、幅広い分野の参加者とともに、オーケストラ活動における合理的配慮のあり方や、誰もが安心して音楽を楽しめる鑑賞環境について考え、理解を深める機会となりました。
オーケストラと合理的配慮 ~誰もが共に音楽を楽しむ場をつくる~
「基調講演とトークセッション」の第1部では、金彦志教授による「合理的配慮とは何か~法制度とその先にある実践~」と題した基調講演に加え、琉球フィルから「美(ちゅ)らサウンズコンサート」の取り組みについて発表がありました。第2部では、7人の登壇者によるトークセッションと質疑応答が行われ、誰もが文化芸術を楽しみ、参加できる環境づくりについて、多角的な視点から意見が交わされました。
金彦志教授の基調講演では、合理的配慮を理解するための基礎として、関連する法制度や「障害の社会モデル」、「セルフ・アドボカシー」の考え方を取り上げ、障害のある人の文化芸術への参加について考えました。まず、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」の基本的な考え方を確認し、障害を個人の心身の特性だけの問題として捉えるのではなく、社会や環境との関係から捉える「障害の社会モデル」について解説しました。特に、2024年4月の改正法施行により、これまで民間事業者には努力義務とされていた合理的配慮の提供が法的義務となったことを踏まえ、その意義について説明しました。さらに、これらの考え方から、障害のある人の活動において、どのような障壁が生じるのか、また、その障壁を取り除くためにどのような配慮や環境づくりが求められるのかについて、具体的な事例を交えながら解説しました。続いて、自分に必要な支援や配慮について、自らの意思を表明する「セルフ・アドボカシー」の概念を紹介しました。当事者自身が自分のニーズを伝えられるようにするためには、本人の意思を尊重するとともに、それを支える周囲の適切なサポートが重要であることが示されました。
トークセッションでは、社会福祉士の樋口貞幸氏がモデレーターを務め、福祉や文化芸術の分野で活動する7人の登壇者が、障害のある人の文化芸術への参加を支える具体的な実践について紹介しました。議論の中では、従来のクラシック音楽のコンサートは敷居が高く、静かに鑑賞することが一般的とされてきたため、周囲に迷惑をかけることを心配し、参加を諦めざるを得ない障害のある人もいるという課題が共有されました。一方で、クラシック音楽は本来、より自由で気軽に楽しめるものであり、声を出したり、体を動かしたりしながら音楽を楽しむことができる、新たな鑑賞スタイルの普及についても活発な議論が交わされました。こうした議論を通して確認されたのは、誰もが同じ方法で鑑賞することを求めるのではなく、一人ひとりが自分に合った鑑賞方法を選べる環境を整えることの重要性です。障害の特性や周囲の環境を理由に文化芸術への参加を諦めるのではなく、一人ひとりが自らの希望や状況に応じて鑑賞方法を選択できること、それは、文化芸術に触れる機会を広げ、誰もが音楽を楽しめる共生社会の実現につながる大切な視点であることを、参加者とともに考える機会となりました。
金彦志教授の基調講演
福祉や文化芸術の分野で活動する7人によるトークセッション