過去の歴史はかわります。歴史学にも進歩はあります。新しい発見によって、また研究の積み重ねによって、過去の出来事の評価についてかわることがあります。そのような歴史学の成果が、もちろん教科書に反映されています。近年、注目されている事柄について、少し紹介しておきましょう。
教科書にある、源頼朝のイケメンの肖像画(神護寺所蔵)は、現在では「伝源頼朝像」のキャプションにあらためられました。装束の様相から、足利直義説も有力ですから、はっきりしたことはいえません。もっとも、国の重要文化財に指定された際は、はじめから「伝源頼朝像」としていましたので、それにしたがったものと思われます。
もうひとつ、「鎖国」論にふれておきましょう。そもそも「鎖国」という言葉は、19世紀、オランダ商館のドイツ人医師ケンペルの『日本誌』を邦訳した志筑忠雄が、書名を『鎖国論』(1801年)としたところからはじまります。教科書では、ながく江戸幕府の鎖国体制と書いてきました。でも、近年では、松前とアイヌ、対馬と朝鮮国、長崎と中国・オランダ、鹿児島と琉球といった、いわゆる〈四つの口〉が海外に開かれていた点が見直され、学習指導要領から「鎖国」の用語が消えました。
実在が疑われている南村梅軒(土佐儒学・南学派の祖)が、いまだに高校の教科書に載っています。教科書は、絶対的なテキストではありません。