清水准教授の基調講演
東日本大震災から15年。被災地では復興が進む一方、経済的困難や家庭環境の問題、生きづらさを抱える子どもたちへの支援が、今なお重要な課題となっています。
こうした状況を踏まえ、認定NPO法人キッズドアが主催する「東日本大震災から始まった子ども支援15年シンポジウム ~今も続く東北の子どもたちの困難と支援のあり方を考える~」が開催されました。本学社会福祉学科の清水冬樹准教授は、「学習支援の場が切り開いた被災経験がある子ども・若者の15年」と題して基調講演を行いました。
清水准教授は、東日本大震災が発生した当時、中学生や高校生が学校以外で安心して過ごしたり、身近な大人に相談したりできる支援の仕組みが十分に整っていなかったことを指摘しました。子どもたちと支援者が出会う機会そのものが少なく、子どもたちがどのような思いを抱え、何を必要としているのかを知ることが難しい状況にあったと説明しました。
また、震災で家族を亡くしながらも、友人の被害と比較して「自分は被災者だと言ってはいけない」と感じていた子どもの事例を紹介しました。被災した子どもたちの中には、周囲への配慮から震災の話題を避け、自分自身の悲しみやつらさを言葉にできずに過ごしてきた人もいたといいます。
こうした状況の中で、キッズドアによる学習支援は、勉強を教えるだけでなく、子どもたちがスタッフと日常的に会話し、信頼関係を築く場としての役割を果たしてきました。また、大学生や地域の人々との出会いを通じて、子どもたちの可能性を広げる機会にもなっていたことが紹介されました。
さらに、子どもの時期に被災した人を対象としたアンケート調査の分析結果から、信頼できる大人との関わりが、現在の生活満足度にも影響していることを説明しました。清水准教授は、震災から時間が経過したことをもって支援が終わったと考えるのではなく、子どもたちの経験や思いに長期的に向き合うことの必要性を強調しました。
パネルディスカッションの様子
続いて、認定NPO法人キッズドアの封馬良美ディレクターから「キッズドア東北15年の歩み」と題した事業報告が行われました。
キッズドアは、震災直後の緊急支援から始まり、学習支援、食の支援、居場所づくり、体験活動、進路支援など、子どもたちの成長と地域の状況に応じて活動を広げてきました。
一方、被災地では人口減少や地域コミュニティの弱体化が進み、不登校、経済的困窮、孤立など、子どもや家庭が抱える課題が複雑化していることも報告されました。進学を希望しながらも家庭の経済状況から大学進学を諦めようとする高校生の事例などを通じて、震災から15年を経た現在も、継続的な支援が必要であることが示されました。
子どもたちとともに未来を考える支援へ
続くパネルディスカッション「東北から考える、子どもたちの未来—子どもたちが希望を持てる社会を目指して—」には、清水准教授のほか、キッズドアの渡辺由美子理事長、公益社団法人ハタチ基金の相内洋輔ディレクター、ジャーナリストの浜田敬子氏が登壇し、NHKの有馬嘉男氏が進行を務めました。
清水准教授は、子どもたちが必ずしも自分の困難を自覚し、言葉にして周囲に伝えられるとは限らないことを指摘しました。そのため、子どもたちが安心して話せる大人との関係を築くことが重要であり、行政による専門的な支援と、市民活動による日常的な関わりが連携する必要があると述べました。
また、子ども食堂などの活動を、子どもたちと社会がつながる仕組みとして評価することや、子どもたちを一方的に支援する対象として捉えるのではなく、ともに現在と未来を考えていくことの大切さについても議論が交わされました。
今回のシンポジウムは、震災後の子ども・若者支援の歩みを振り返るとともに、子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現に向けて、長期的な支援と地域の連携のあり方を考える機会となりました。