Q. 佐光さんが東日本大震災の語り部、そして「伝承サポーター」としての活動を始めようと思ったきっかけを教えてください。
A. 以前の私は伝承活動とは無縁で、震災について話すことすら避けていました。地元の福島県相馬市では、震災に触れないことがお互いへの配慮という暗黙の了解があったからです。ただ、心の底では「聞いてほしい、話したい」という想いもずっと抱えていました。
転機となったのは、大学3年次の「実学臨床教育」(注1)でのフィールドワーク選定です。阿部利江先生から「震災から15年が経過し、伝承施設や来訪者が減り補助金も打ち切られている」と聞き、今が節目の年だと感じました。被災当事者として「震災から逃げる人生を止めたい」と覚悟を決め、伝承活動の研究をテーマに選びました。
活動先に宮城県石巻市を選んだのは、地元だと感情があふれすぎて客観的な分析が難しくなると考えたためです。先生から多くの機関と繋がっている「MEET門脇(3.11メモリアルネットワーク)」をご紹介いただき、フィールドワークを開始しました。
Q. 震災の記憶を人前で話すことには勇気が必要だったと思います。一歩を踏み出す際、どのような想いがありましたか?
A. 不安もありましたが、「自分の経験が誰かの役に立つかもしれない」という気持ちが勝りました。
特に印象的だったのは、旧門脇小学校の展示で涙を流す来訪者に出会ったことです。「どうせ理解してもらえない」という思い込みが覆され、「想いを受け止めてくれる人がいるんだ」と胸が熱くなりました。ずっと閉じ込めていた記憶を解放する勇気をもらった瞬間です。
一方で、ただ体験を語るだけでは「伝承」にならないことも実感しています。想いを伝えたうえで、いかに来訪者の防災意識や行動変容に繋げるか。「被災当事者としての自分」と「伝えるガイドとしての役割」のバランスを取りながら、今も模索を続けています。
Q. 「伝承サポーター」として、普段はどのような場所・対象にどのような活動をされているのでしょうか?
A. 主に「MEET門脇」や隣接する旧門脇小学校、周辺の避難経路などでガイドを行っています。対象は修学旅行で訪れる小中高生が中心ですが、週末には一般の来訪者の方々への案内も担当しています。
Q. 震災の記憶や教訓を伝える際、最も大切にしていることや工夫はありますか?
A. 聞き手に「自分ごと」として捉えてもらうことです。他人事のままでは、具体的な防災行動には繋がりません。自分の被災体験を交えながら、「もし同じことが自分の身に起きたら」と想像してもらえるような語りかけを意識しています。一方で、話し込みすぎると感情が込み上げてしまうため、今はあえて淡々と話してしまうのが課題です。感情をコントロールしながら、参加者の心に届く伝え方を研究している最中です。