本研究では、この可能性について検討を行ないました。実験では、PD患者と健常対照者(Healthy Control: HC)に、3つの扉から1つの扉を選択することでポイントを獲得していく扉ゲームに参加してもらいました。扉ゲームには、シャッター条件とコントロール条件の2つの条件が設けられており、シャッター条件では、選択していない扉のシャッターが少しずつ降りていき、シャッターが完全に閉まってしまうと、その扉を選択することができなくなりました。対するコントロール条件では、シャッターが降りてくることはなく、扉を選択できなくなることもありませんでした。
PD患者ではSPECT画像から線条体のドーパミントランスポーター分布の測定が行われました。その結果、HCは選択肢を維持するために、シャッター条件でより頻繁に選択する扉を切り替えるのに対して、PD患者ではそのような行動がみられないことが分かりました。また、ドーパミントランスポーターの分布が低いPD患者ほど、シャッター条件とコントロール条件の扉の切り替えの差が小さいことが分かりました。本研究の結果は、PD患者では、ドーパミン神経系の障害により、選択肢を失うことへの忌避感が低下することを示唆しています。
本研究成果は、パーキンソン病患者の病態理解と新しい治療アプローチの発見に貢献すると期待できます。
Shigemune Y, Kawasaki I, Baba T, Takeda A, Abe N (2022)
Decreased sensitivity to loss of options in patients with Parkinson’s disease
Neuropsychologia 174: 108322
https://doi.org/10.1016/j.neuropsychologia.2022.108322